正規職員削減が影響 ▽不況で共働き拡大は想定外 福山市の市立保育所で、臨時採用の保育士が急増している。不況に伴う共働き世帯の拡大で特に0〜2歳児の入所が増え、人手が足りなくなったためだ。少子化を見据えて保育士を削減してきた市にとっては想定外の現象で、対応に苦慮している。 同市曙町、あけぼの保育所ひよこ組の保育室。0歳児12人が玩具で遊び、昼寝をして日中を過ごす。保育士4人のうち3人は臨時採用者だ。 省令は0歳児3人につき保育士1人の配置を定めている。昨年同期、0歳児は5人だったので保育士は2人で間に合ったが、ことしは2倍の4人が必要となった。 来年早々には0歳児が1増の13人となるため、保育士をさらに1人確保しなければならない。東美智子所長(57)は「受け入れる側にも限界がある」とうなる。 ■過去最多306人 市が4月に臨時採用した保育士は過去最多の306人。市立62所の保育士計738人の4割を占める。早朝保育や延長保育、担任など勤務形態は様々だ。一方で、正規採用者は2006年以降、毎年11〜17人減らしてきた。市児童部は、児童数は07年前後をピークに減少するとの推計を根拠に挙げる。 しかし、08年秋のリーマン・ショック後、0〜2歳児の入所が急増。ことしは市全体で3751人(4月1日現在)と08年同期を約550人上回る。少子化を見据えた推計は大きく外れた。 ■離職者を勧誘 市は、広報紙やホームページ(HP)で臨時採用者を募り、昨年からハローワークでの求人も始めた。年度途中に入所する子どもがいるため、あと30人確保する考えだ。介護などを理由に離職した経験者や現役保育士の学生時代の友人に声を掛けている。 保育士不足は私立でも深刻化している。市法人立保育所協議会によると、公務員志向の高まりで公立志望者が増え、資格を取得しても企業へ就職する新卒者が目立つという。 協議会は5月にHPを開設し、加盟56施設の採用情報を更新している。桑原徹也副会長は「退職、離職した有資格者は貴重な戦力。市との人材の取り合いに危機感を抱く声も出ている」と明かす。 同市では高度経済成長期、日本鋼管福山製鉄所(現JFEスチール西日本製鉄所福山地区)の進出などで人口が増大。併せて保育所整備が進んだ。公私立計118の施設数は、中核市では熊本、宮崎に次ぎ3番目に多い。 潤沢な受け皿を背景に市が看板政策として進めてきた「待機児童ゼロ」が、マンパワー不足に直面している。福山市児童部の岸田清人部長は「景気は上向いており、安易に正規採用を増やせない。ピンチが一過性に終わってほしい」と動向を注視している。(門脇正樹) (2011.7.31)
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