広島市 共働き世帯の増加など背景 親の職場復帰にも影響
広島市で認可保育園の入園を待つ待機児童が増え続けている。不況による共働き世帯の増加が背景にある。市も対応策を打ち出すが、決め手に欠き、保護者はやり切れなさを募らせる。家庭や保育現場を歩き、子育て支援策の課題を探った。 「子どもを預けられないから働けないなんて」。西区の会社員吉崎由紀子さん(40)は納得がいかない。 長男光君(1)を保育園に預け、昨年11月に育児休暇から復帰予定だった。だが、自宅近くの2園は空きがなかった。2キロ以上離れた園なら入れる可能性があったが、通勤などを考えて無理だと判断した。育休を半年延期せざるを得なかった。 いまは今春の入園に期待をつなぐ。年長の卒園で定員に空きが出やすいからだ。ただ、入園できる保証はなく、吉崎さんは「職場を長期間離れざるを得ず、取り残されているようだ」と話す。 ▽732人最多を記録 市の待機児童は昨年10月1日現在で732人と最多を記録した。市は私立保育園の増築で定員増を図るものの、需要には追い付いていない。 市内で待機児童が201人と最も多い安佐南区。私立の佐東ひかり保育園は昨年5月、施設建設の市補助金を活用し、敷地内に3階建て園舎を新築した。定員は210人から300人に。だが依然、入園希望が多い3歳未満児は20人(2月1日現在)が入園待ち。「1人でも多く入園させてあげたいのだけど」。梶原美枝子園長の表情はさえない。 入園希望が増え続ける一方、保育園や行政の関係者の多くは、少子化が進む中でいずれ希望者は減少傾向に転じるとみる。施設の新設や保育士の雇用を進めても一転、空き施設や過剰雇用に悩みかねないとの懸念である。 ▽全国で独自対策 全国では自治体が独自の対策に乗り出している。静岡市は昨年10月、全国初の「待機児童園」を開設した。年度途中に育休から職場復帰しなければならない保護者の子どもを、暫定的に年度末まで受け入れる制度。福岡市は同月、保育士資格を持つ市民が自宅などで預かる「保育ママ事業」の試行を始めた。 広島市も昨年7月と11月の2回、保育園を新設する民間事業者を緊急募集。名乗りを上げた事業者が11年度中に新たに4園を開園する予定だ。さらに廃園予定の市立幼稚園を保育園へ転用し、小中学校の空き教室を預かり施設として活用することを検討している。 それでも11年度の市の待機児童は増える見込みだ。(野田華奈子) (2011.2.17)
【関連記事】 |