生まれて70年。今も進化を続ける。母子健康手帳がこの春、10年ぶりに改訂された。赤ちゃんの便の色見本が付いたのは、胆道閉鎖症を見抜くため。親が自由に書き込む欄も充実した。一人で抱え込まないで―。手帳からエールが伝わる。 懐かしく思い出す。わが子が生まれ、育児にあえいでいた時、実家から古い母子手帳が届いた。初めて見た自分の記録。10カ月のころ高熱が続き、若い両親は慌てたようだ。1時間おきの体温が書き込まれていた。フッと心細さが消えた。 「産めよ増やせよ」の国策によって「妊産婦手帳」が配られるようになったのが始まり。ひもじかった戦時中も、手帳のある人には優先して米や砂糖が配給されたという。救われた命も多かったに違いない。 日本発祥の母子手帳は今、25以上の国や地域で使われている。何と人間以外の生き物にも。トキのひな誕生で沸く新潟県佐渡市が、親鳥とひなに母子手帳を発行するという。元気に羽ばたけと願いを込めて。 地元の喜びが伝わってくる。待望の初孫が生まれたような。若いつがいの経験不足が心配されたが、このまま取り越し苦労で終われば…。巣立ちの日は、もうそこに。 (2012.5.12)
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