子宮頸(けい)がんと子どもの細菌性髄膜炎を予防する計3種類の子ども向けのワクチンの無料化が新年から、中国地方の多くの市町村で始まる。国の助成を受けた動きだ。三つのワクチンにはどんな効果があるのか。広島市医師会で公衆衛生を担当する永田忠理事に聞いた。(平井敦子) ―三つのワクチンはそれぞれ、どの病気を予防するのですか。 インフルエンザb型(Hib=ヒブ)ワクチンと、小児用肺炎球菌ワクチンは、子どもが細菌性髄膜炎にかからないよう予防します。子宮頸がん予防ワクチンは、子宮頸がんを起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぎます。 ―まず、細菌性髄膜炎がどんな病気なのか教えてください。 脳と骨髄を覆っている膜に、細菌が入って増殖すると、髄膜炎を引き起こします。 やっかいなのは、診断が難しいことと重症化するケースが少なくないことです。国内でも1年に800人前後が発症し、50〜200人に聴覚障害などの後遺症が出ます。脳性まひになって寝たきりになる子や、発達が止まってしまう子もいる怖い病気です。 ―ワクチン接種はいつが効果的ですか。 細菌性髄膜炎は、免疫が弱い生後2カ月から2歳ぐらいまでの乳幼児がかかりやすく、5歳ぐらいまでリスクが高いです。生後2カ月以降の早期の接種を勧めます。 ―ヒブと肺炎球菌のワクチンを同時に接種できますか。 はい。同時に接種することを勧めます。ほかにもポリオや結核予防のBCGなど、1歳までに接種が必要なワクチンは多く、すべてを別々に接種するのは大変だからです。 ジフテリア、破傷風、百日ぜきの3種混合ワクチンも1歳までに3回接種が必要です。最近は、ヒブと肺炎球菌、3種混合を同時接種する子が増えてきました。同時接種するときは、両腕の3カ所に場所を変えて行います。 ―子宮頸がん予防ワクチンについても教えてください。 子宮頸がんは、子宮の入り口付近にできるがんで、30歳代が発症のピークといわれています。このがんを引き起こすHPVは15種類ほどあります。今回のワクチンは、子宮頸がんの原因として最も多く報告されている2種類(HPV16型とHPV18型)の感染を、10年防ぐといわれています。 ―接種時期は。 多くは性交渉によって感染します。ですから、性交渉をする前に接種すべきでしょう。注意してほしいのは、ワクチンを接種しても、子宮がん検診が必要な点です。ワクチンで防げるウイルスの型が限られているためです。20歳になったら、最低2年に1度は検診を受けましょう。 ―副作用はありますか。 ヒブと肺炎球菌ワクチンは局所のはれ、かゆみ、発熱など他のワクチンと同じような症状が報告されています。ただ、頻度は他のワクチンに比べて多くありません。子宮頸がん予防ワクチンは、痛みなど局所反応が強いようです。保護者の方にぜひ知ってほしいのは、副作用よりも、病気になるリスクの方がずっと大きいという現実です。予防できる病気は予防してほしいと切に願っています。
(2011.1.5)
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