角谷勝己(鯉城学院学院長) 前回60点だった算数が今回は70点。あなたはわが子にどんな声をかけるだろう。 さすがに「たった10点くらいで」とは言わないまでも(えっ? 言いますか!?)、残りの失点が気になって「まだ30点もあるんだから頑張らないと!」と叱咤(しった)激励する親は少なくない。問題が易しかったから点が伸びたんだと決めつけて「平均点高いんでしょ!」と難癖をつけるケースもあるというから子どももたまったもんじゃない。 とりあえず10点伸びたことを認める場合も「でも、国語がね」と出来の悪かった他教科に文句をつけたり、「今回だけじゃ意味はない」とあっさりスルーしてしまったり、ストレートに褒めてやれない親のなんと多いことだろう。 わが子の成長を願わない親はまずいない。だがその願いが「こうなってほしい」「せめてここまで」という期待に変わり始めると、子どもを見る目も変わるようだ。わが子の「足らないところ」「欠けたところ」「違うところ」ばかりに目がいくようになる。どれだけすばらしい長所があろうがおかまいなし。気になる欠点を修正することに躍起になる。だって、まだ30点もできなきゃいけないところがあるんだから。 だが70点を取ったと伝えてきた子どもは、そんな難しいことは考えていない。10点増えたことを褒めてほしいだけである。なら、親はまずその通り褒めてやればいいではないか。こんなもので褒めたら調子に乗るとか、この程度は当たり前なんていう判断は脇に置いて、「10点伸びたな」「うれしいぞ」と認めてやろう。それだけで子どもは頑張って良かった、次もやるぞと思うはずだ。 「短所四分、長所六分」は「人づくりの神様」松下幸之助氏の言葉。とかく人間は他人の欠点を強く意識しがちだが、短所を見ないで起こる弊害よりも、長所を見ることで生ずるプラスの方が大きいと「神様」は言う。わが子のためならなおのこと、プラスに転じるアプローチを選ぶのが親ではないか。 (2009.10.5)
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