浜田医療センター「里帰り」休止決定
益田赤十字病院(益田市)の産婦人科医師が1人に減ったことに端を発し、国立病院機構浜田医療センター(浜田市)が19日、里帰り出産の受け入れ休止を決めた。地域の医師不足が長期化する中、周産期医療の危機的状況が島根県西部に拡大している。 ▽対応機関5年で3減 浜田医療センターの昨年の分娩(ぶんべん)件数は511件。うち、里帰り出産は120件(23・5%)を占める。益田からの受け入れ増加を前提とした受け入れ休止について、石黒真吾院長は「周産期医療の崩壊を防ぐための苦渋の決断」と強調する。 益田赤十字病院には3月末まで3人の常勤医師が在籍。昨年度は391件の分娩があった。麻酔科の常勤医師が1人に減ったことを機に鳥取大医学部出身の医師2人が退職。残る1人の医師を島根大医学部から派遣される非常勤医師が支える。 島根大医学部の宮崎康二教授(産婦人科)は2日、益田赤十字病院の幹部と同席した記者会見で分娩制限の必要性を指摘。「常勤1人と非常勤1人の態勢では(分娩件数は)年間200〜250件が妥当」とし、浜田医療センターなど近隣病院に協力を要請した。 益田赤十字病院は2008年11月に里帰り出産を休止。浜田、益田の県西部の二大病院が里帰り出産を受け入れない事態となった。石黒院長は「浜田の医師にこれ以上、負荷を掛けると、出身大学への医師引き揚げもあり得る。より多くの妊婦に迷惑を掛ける可能性がある」と苦り切った。 危機の連鎖は、これだけではない。益田赤十字病院の医師が週1回担当していた津和野共存病院(津和野町)の産婦人科は3月末で閉鎖された。妊婦検診を津和野共存病院で行い、分娩を益田赤十字病院が受け持つ役割分担が機能不全に陥り、益田赤十字病院の負担が増している。 県西部で分娩可能な医療機関は5カ所。5年で3カ所減った。08年7月から09年3月にかけて、大田市立病院の常勤医師が1人となり分娩件数を月約20件に制限したこともある。県西部の医師確保に限界が出ている中、「出産危機」のさらなる波及が懸念される。(石川昌義) (2011.5.20)
|