ジュニアライター(右)の質問に答える演劇部のメンバーら
約40年にわたって、定期公演や広島県内の中学校での公演を続け、昨年秋からは「CRANES(鶴)」の上演をしています。現在の部員は20人です。
舞台は現代の高校の生徒会。鶴を折りながら、一人一人が家族の被爆体験や、いじめのことなどを打ち明け、今、鶴を折る意味は何かを見つめ直していきます。自分自身の問題として原爆、平和を考える姿を伝えるのが狙いです。
劇を作る前には、原爆資料館や平和記念公園を訪れて感想をまとめたほか、何をテーマにするかを話し合い、それを基に顧問の黒瀬貴之先生(43)が脚本を書きました。
三年の中前夏来さん(17)は「被爆体験を直接伝えられる人が減っている今だから、これからも続けないと」と言います。「原爆劇は、何度話し合っても答えは出ないけれど、毎年『このメンバーでないと作れない』作品を目指している」と黒瀬先生が話すように、先生と生徒の真剣な議論によって伝統が受け継がれています。(高3・中重彩)
爆心地から約350mにある本川小では、原爆で400人以上が犠牲になりました。当時の児童で、被爆者の居森清子さん(73)=横浜市=の体験をもとに、一昨年から毎年6年生が脚本を考え、全校児童参加の音楽劇を作っています。
昨年の「本川の窓、あしたへ」は、現代の小学生が原爆投下直前の学校にタイムスリップするストーリーです。舞台に立つのは6年生。他の学年は合唱や踊りで出演しました。
昨年この小学校に通っていた私は、劇の練習の進み具合をまとめて新聞を作る広報係と、合唱で参加しました。練習を重ねるごとに、みんなが一つになっていくのが分かりました。原爆の恐ろしさや、二度と戦争をしてはいけないというメッセージが伝わる劇になったと思います。(中1・今野麗花)
携帯電話で話したり、街を行き交ったりする現代の生活に突然、原爆が落ちたら―。劇「I PRAY」はその落差を描くことから始まります。昨年の公演を見た私も恐怖を感じました。
劇を指導する被爆二世のダンスインストラクター木原世宥子さんは「一瞬で、明から暗に変わる恐ろしさを体で感じてもらいたい」と言います。1996年から始め、今年も8月5日の本番に向け練習しています。「I PRAY」とは「私は祈る」の意味です。
木原さんは小さいころから入市被爆した母親から話を聞かされ、自身もABCC(現在の放射線影響研究所)で検査を受けた経験があります。
「平和は一瞬で奪われるものだからこそ、いつも願っていないといけない」と考える木原さん。劇で表現しようと、教え続けているのが「笑顔」です。平和のために、私たちがなくしてはいけないものだと気付いてほしい―というメッセージが込められています。
劇はダンス経験者に限らず、誰でも参加できます。(中2・坂田悠綺)
原爆などをテーマにこれまで創作した劇のうち5つのダイジェスト版「私たちの演劇」を、昨年8月、広島市の中高生による平和活動の発表会で上演しました。
せりふに歌も織り交ぜて紹介。最後にまとめとして「どんな状況でも必死に生きる姿の尊さ、人を思いやる心の優しさを訴え続けたい」と発表しました。