施設育ちの経験生かし寄り添う
広島市西区草津新町の吉田浩美さん(44)が今月、虐待などの理由で親と暮らすことができない子どもを引き取って育てる事業「ファミリーホーム」を自宅で始めた。吉田さんはかつて児童養護施設で暮らした。「家庭のぬくもりを伝えたい」と子どもに寄り添う。 吉田さん宅で暮らすのは3〜13歳の男女4人。吉田さんが里子として育てている子どもたちだ。 3日、下から2番目の男の子が5歳の誕生日を迎えた。2010年春、里親になって初めて受け入れた子どもだ。絵の具を塗って手形、足形を取り成長の記録を残す恒例行事。家じゅう大騒ぎになった。 保護が必要な子どもの多くは児童養護施設に預けられる。ファミリーホームは新たな受け入れ先として、児童福祉法改正に伴い09年4月から設置できるようになった。 一定の条件を満たした里親や法人が運営し、受け入れは6人まで。家庭的な雰囲気の中で育てられることが特徴だ。吉田さん宅は呉市の個人宅に続き県内2件目となる。 吉田さん自身、生後間もなく乳児院に引き取られ、高校まで児童養護施設で育った。子どもたちの力になりたくて高校卒業後、その施設の職員になった。 職員1人が多くの子どもの面倒をみる施設の限界も感じた。「じっくり向き合いたい」。ファミリーホームが制度化されるのを知り09年春に退職。開設準備を進めていた。 出会ったころは無口だった子どもに次第に笑顔が増え、きょうだいのようにじゃれ合う。吉田さんは「一つ屋根の下で暮らすことで絆が生まれる」と話している。(胡子洋) (2012.6.6)
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