中国新聞


頼れる家族の役割担う
子ども自立支援ホーム、9月開所


   

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「子どもにとって里親は将来にわたって頼れる存在になる」と語る金高さん

 広島県東部地区里親連合会の金高良樹会長(59)=福山市内海町=は9月下旬、児童養護施設を巣立った子どものための自立支援ホームを個人で開く。里親を長年務めてきた経験からホーム開所に踏み出した。里親制度の現状と課題、自立支援ホームを始める目的を聞いた。

 −里親制度の現状を教えてください。

 里親は、乳児院や児童養護施設などで暮らす子どもを委託で預かり育てる。児童福祉法に基づく制度だ。2010年度末現在、県内では134世帯が登録している。うち県東部は50世帯。

 乳児院・児童養護施設・ファミリーホームでは、子ども計712人(10年度末現在)が暮らしている。うち県東部は191人。一方、里親の元で暮らす子どもは県東部の22人を含め64人(同)。里親を生かしきれていないのが実情だ。

 −里親を始めたきっかけは。

 00年ごろ、盆と年末年始に子どもを預かる県のボランティア事業に参加した。預かった女の子は「おいで」と声を掛けても逃げた。不思議だったが後で気付いた。「おいで」という言葉が、児童相談所の職員に呼ばれて実の親から離れる時の記憶を呼び起こしていた。心が痛んだ。乳幼児期にこそ愛情を伝えたいと思った。

 ―続ける理由は。

 03年に里親に登録し、05〜09年に男児3人をそれぞれ半年〜4年半育てた。子どもが納得するまで話を聞くと、子どもは伸びる。子どもからたくさんのことを教えられる。連合会の会長に4月に就任した。今後は里親の交流を増やして、育児の質を高め合いたい。会の活動を支える寄付が大幅に減っているので、協力者も増やしたい。

 −自宅隣に開く自立支援ホーム「憩いの家」はどう運営しますか。

 児童養護施設などを巣立っても、頼れる家族がいない子どもは、病気や失業などの困難を一人で乗り越えないといけない。ある施設職員は「自殺した子どももいる。受け皿が必要」と涙ながらに話してくれた。一文無しで来てもらって大丈夫。園芸の仕事もある。

 −1998年に高校1年の四男慎(まこと)君=当時(16)=が同級生から暴行を受けた後、自殺する経験をされました。

 身を切られるように苦しかった。「思いやりのある社会にしなければ」と感じた。前を向いて、子どもの役に立つことをしていきたい。(久保友美恵)

(2011.8.22)


きんたか・よしき

福山市出身。福山電波工業高(現近大付属福山高)卒業後、2年間団体職員を務め、祖父が同市内海町で経営する園芸会社に就職、後を継いだ。現在、約4600平方メートルのジャーマンアイリス園で、約750種6万株栽培し、全国に販売している。



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