中国新聞


児童生き生き、本と親しむ 岩国市教委が読書支援事業
推進員派遣の読書支援事業 各校、貸出数増へ工夫


   

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麻里布小6年3組の教室で、児童にお薦めの本を紹介する読書活動推進員の初鹿野さん

 岩国市教委が小学校を対象に2009年度から始めた読書活動活性化支援事業が3年目を迎えた。司書や教員免許を持つ読書活動推進員5人を各校に派遣し、児童が活字により親しむようになるなど成果を挙げている。年約500万円の予算で派遣先は年最大10校。市内全36校のカバーは厳しく、各校が事情に合わせた取り組みを進めている。

 「これは野口さんが登山家を目指すまでを書いた感動的な本です」

 児童数約870人を抱える山手町の麻里布小。6年3組の教室に穏やかな女性の声が響く。児童33人の視線の先には、野口健著「あきらめないこと、それが冒険だ」の本を抱えた推進員初鹿野明子さん(44)=大竹市油見=が教壇に立つ。

 川下小と2校を受け持つ初鹿野さんは10年度から週3日、麻里布小の2〜6年生のクラスを日替わりで巡る。授業前の約15分間、本の読み聞かせや紹介をする。その後は図書室に常駐。司書教諭やPTAが雇用する司書係と協力し、蔵書約2万冊の整理、調べ学習の手伝いなどをする。

 麻里布小の児童1人当たり年間貸出数は09年度約60冊。初鹿野さんが勤務を始めた10年度は約66冊に増えた。高田利明校長(58)は「図書の専門家として児童はもちろん、教員の関連教材の相談にも応じてくれる。図書室運営が能動的になった」と話す。

 ▽廊下にコーナー

 推進員の派遣がなくても、独自のアイデアを光らせる学校がある。由宇町の由西小。全校児童25人の同小は会議にも使う多目的室に蔵書約5千冊を置く。粟屋智志校長(55)は「専用の図書室はなく、環境は決してよくない」としながらも「教員の工夫次第で本に親しむ体制はできる」と断言する。

 同小は昨年度から、司書教諭の資格を持つ中上実花教諭(30)を中心に蔵書を整理。廊下などに図書コーナーを設け、児童1人当たりの貸出数は年約120冊と市内トップクラスになった。

 ▽「表現力に変化」

 本年度からは、教職員10人が選んだ本計120冊の一覧表を全児童に配布。漫画や図鑑ではなく児童が敬遠しがちな小説を中心に選んだ。読んだ本の欄にシールを貼らせ、達成度が一目で分かる仕組みにした。

 「子どもの表現力が明らかに変わった」。中上教諭は成果をこう表現する。宿題の日記に会話や擬音語など具体的な記述が増えたという。6年角井志帆さん(12)は「増えていくのが楽しい」と表に貼った38枚のシールを誇らしげに見やった。

 市教委は司書資格者の人的配置と教職員、ボランティアによる読書活動の推進を盛り込んだ教育基本計画案を策定。市のホームページで閲覧できる。(藤田菜穂子)

(2011.12.24)


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