いじめ減少・学力向上…
呉市が全国に先駆けて取り組んだ小中一貫教育の導入から10年余りがたった。中学進学時に環境になじめない「中1ギャップ」の解消を目的に始めた一貫教育は、いじめや暴力行為の減少などの成果が上がっている。一方で、教員が小中学校を行き来する「乗り入れ授業」の展開が、教員の負担増を招いているとの声も上がっている。 ■「乗り入れ」教員負担増も 「自分に自信を持つ子が増えた学年があったり、学習時間が増えたりするなど大きな成果が表れた」。2年前から隣接する警固屋小と一体型の一貫教育に取り組む警固屋中の二宮肇美教諭は成果を説明する。 市教委によると、暴力行為が見られた中学1年生の人数は、一貫教育を全中学校区で始めた2007年度は40人いたが、10年度には21人に半減した。いじめの認知件数も07年度の31件から10年度は11件に激減した。学力面では、10年度の全国学力学習調査で、初めて小中学校ともに全国平均を上回ったという。 ▽全国初の国指定 市は1990年代から中1ギャップなどの解決策として小中一貫化を研究し、2000年に二河中学区が国から全国初の小中一貫教育の研究開発学校の指定を受けた。 現在は「4・3・2」の区分で学習指導要領にのっとり、市内全28中学校区で取り入れている。小中学校の教員が行き来する「乗り入れ授業」や、学校行事で小中学生が交流する「異学年交流」などを実施している。 7月末には市内で小中一貫教育全国サミットがあり、全国の教職員たち約2100人が集まった。市の教職員のほか、児童・生徒も「中学校の様子が分かって安心」「小学生の見本なんだという意識になる」などと、魅力を説明した。 ▽改善策に工夫を 課題も見えてきた。小中学校の距離が離れている場合は、教員や子どもの移動に時間がかかる。市教委は小中の両校で教える、乗り入れ授業を担当する教員を一部の校区で増員するなど、改善を図っている。だが「増員のない校区もある。これ以上仕事が増えると、人が足りなくなる」と漏らす教員もいる。 広島大大学院教育学研究科の小原友行教授(社会科教育学)は「学校の実情に合わせて教員の負担にならない工夫ができるはずだ」とした上で、「子どもたちが将来の目標を持つようになるなど成果が表れている。伸びている学力もさらに向上するのではないか」と一貫教育の発展に期待していた。(柳本真宏) (2011.9.5)
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