中国新聞


承認の言葉 課題修正の勇気与える
角谷勝己(鯉城学院学院長)


 子どものやる気を奪うNGワードをご存じだろうか? 「何回言えば分かるの」、「前もそうだったでしょ」、「いいかげんにしなさい」、「もう知らないわよ」、「お父さんに言うからね」等々。その無神経で感情的な一言でいともたやすく子どもは傷つく。「えっ? それくらいで?」と思う人はすでに重症=Bさらにエスカレートする可能性もあるので要注意。

 小学六年生の「国語王」と、誰もが認めるA君は漢字テスト満点合格の常連である。そのA君が先日のテストで半分の五点しか取れなかった。うつむいたままの彼が気になって、話を聞いてみた。

 A君は前回のテストで算数の出来が悪く、お母さんから「いくら国語ができても意味はないでしょ。算数ができないと受からないのよ」と怒られたという。彼自身、国語に比べて算数が今イチでなんとかしないといけないと思ってはいたものの、絶対の自信を持っていた国語を「無意味」と完全否定されたことがとてもショックだった。一生懸命頑張っても意味がないならやるだけ無駄と、気持ちがなえてしまうのも当然だろう。その結果の「五点」だった。

 「テストの結果を見てカーッとなってつい」というお母さんも、まさかわが子が自分の言葉でそこまで傷ついているとは思ってもいなかったらしく反省しきりだった。

 子どもは親が思うほど打たれ強くない。否定の言葉にはことのほか弱く、私の長い塾講師生活の中でも、否定され続けて伸びた子は一人もいない。

 子どもを伸ばすのは承認の言葉である。認められれば元気になる。その元気が修正すべき課題に取り組む勇気をくれる。そんなこと百も承知のはずなのに承認できないのは、親が期待のあまり、わが子の欠点ばかりに気を奪われてしまうからにほかならない。

 「何言ってんだ、おまえの国語ってマジですごいんだぞ」と言ってやったときのA君の顔は、きっと皆さんにも想像できるだろう。その少し照れた笑顔こそ承認の効果なのだ。

(2009.5.25)

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