中国新聞


住民パワーで全市カバー
三次の放課後児童クラブ


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指導員が見守る中、宿題に励むさくぎ児童クラブの子どもたち

 ▽通学区自由化で活発

 三次市で、放課後児童クラブが全小学校をカバーする体制が整った。国・県のクラブ運営費補助の基準に満たない小規模校が多い中、住民が市独自の補助を受けてクラブを運営。通学区域自由化を背景に、地域活性化のため市内から広く児童を呼び込む試みも出ている。ただ、現場には、運営資金不足を懸念する声もある。

 作木小そばにある文化センターさくぎに、児童の元気な声が響く。今年四月に開設された「さくぎ児童クラブ」だ。一、二年計六人が宿題に取り組み、遊びの場としても利用している。

 「昼間に保護者がいない小学一〜三年十人以上」を要件とする国・県の補助基準では設置できない規模だ。「おおむね五人以上」を対象にする市の独自補助を受け、住民自治組織や保護者たちが運営している。平日は放課後午後六時まで、長期休みは午前八時〜午後六時まで開く。

 「核家族なので子どもが一人の時間が長い夏休みは特に不安。ここで面倒をみてもらえると安心です」と団体職員亀崎美紀さん(44)は打ち明ける。もし放課後児童クラブがなければ、クラブが利用できる別の学校に通わざるを得ない、との思いを抱く保護者もいる。

 市内には、市や公的団体が運営する国・県の補助対象クラブが十四カ所、住民やPTAが運営する市独自補助のクラブが十二カ所開設されている。一つの学校に複数のクラブがある一方で、一つのクラブで複数の学校を受け持つ現状はあるものの、全二十七校をカバーする。

 ■魅力アピール

 住民がクラブを運営する背景には市が二〇〇七年度から始めた通学区域自由化もある。

 児童の減少で〇八年度、住民運営に切り替わった粟屋小のクラブ。対象を三年から六年に広げたことを新聞折り込みチラシなどでPRし、英語や習字教室も開催した。クラブの「魅力」で児童を地域に呼び込もうとの狙い通り、転入生もやって来た。

 ただ、昨年度は補助や利用料だけでは運営費が足りず、地元の社会福祉協議会や自治組織の助成でまかなった。指導員一人で十八人を見ているが、夏休みは二十人以上になる見込み。指導員をもう一人増やす必要があり、人件費が課題だ。

 ■年84万円上限

 市の独自補助は年間八十四万円が上限。加井妻敏幸事務局長(63)は「利用人数に合わせた補助の仕組みがあれば」と訴える。

 河内小は一〜三年を市直営、四―六年を住民自治組織の運営クラブが担当している。市の独自補助も原則一〜三年を対象にするため、自治組織の運営クラブへの補助はない。市子育て支援部は「財政的に厳しい。四年生になればある程度自立する」と説明する。

 授業が終わった後の子どもの居場所づくりについて、国は〇七年度から「放課後子どもプラン」を始めた。厚生労働省の放課後児童クラブに、文部科学省が〇七年度に創設した「放課後子ども教室」を連携させる取り組みである。

 広島県内には〇八年度、百五十二カ所に教室が設置され、うち五十三カ所はクラブとの併設だ。だが、三次市教委は導入の検討を始める段階という。

 過疎化、少子化が進む三次市では、児童が学校から帰宅しても、近所に遊ぶ友人がいない地域が目立つ。「居場所」を求めるのは高学年も同じだ。

 子どもを守り、健やかに育てたい―。市には住民や地域の願いをしっかり受け止め、実態に即したさらなる支援策を打ち出してもらいたい。(余村泰樹)


クリック 放課後子どもプラン 厚生労働省の放課後児童クラブと、文部科学省の放課後子ども教室を連携させ、子どもの活動場所づくりを進めようと国が2007年度から開始した。クラブは保護者が昼間いない小学1―3年生が対象。開所日数や一人当たりの面積などに基準がある。運営費は2分の1を保護者、残りの3分の1ずつを国、都道府県、市町村で負担。一方、教室はすべての子どもが対象で人数や開所日数などは問わず原則無料。運営費の3分の1ずつを国、都道府県、市町村が負担する。

三次市の小規模型放課後児童クラブ 昼間保護者のいない小学1―3年生が対象。地域の都合で6年生まで利用は可能としている。一日3時間以上、年間200日以上開くのが条件で市が年間84万円を上限に運営費を補助している。初年度は設備費として年50万円を上限に別枠で補助する。


(2009.5.18)

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