増え続ける入会児童 家庭の6割で母親就労 働く親を持つ小学生の放課後の「安心・安全」に懸念が出ている。広島市が運営する「留守家庭子ども会」の約半数は定員超過だ。開設時間は本年度から一時間延長されたが、残業のため迎えに間に合わない親も少なくない。学童保育の現状と課題をみた。 「おやつだよ」。午後三時。広島市西区の高須児童館で遊んでいた児童のうち、留守家庭子ども会に入会する小学一、二年生が二階に「大移動」を始めた。押し合いへし合いしながら手を洗い、せんべいとクッキーを取る。肩を寄せ合って座り「いただきます」。嵐のような騒がしさだ。 留守家庭子ども会には本年度、定員の四十人を大幅に上回る計六十人が入会した。本来は対象となる三年生九人は入会できず、授業が終わったら、児童館に来て過ごす「ランドセル来館」に回った。留守家庭子ども会のような出欠の確認はなく、おやつも出ない。 留守家庭子ども会は市内の児童館などに百四十七施設ある。本年度の入会は六千三百八十一人で、昨年比で百八十四人も多い。ここ十年間、ほぼ同じペースで増え続ける。七十施設が定員超過だ。 「安全に気を配るので精いっぱい。子ども一人一人と接して甘えさせてやりたいが…」。ベテラン指導員(59)は憂う。市は臨時指導員の配置や学校の特別教室を利用する「臨時増設」を進めるが、対応しきれていない。 最大の原因は、共働き世帯の増加だ。昨年の市の調査では、児童を持つ家庭の約六割の母親が就労。母子世帯は過去五年間で約千世帯多くなった。景気状況をみても、働く母親が今後も減ることは予測しづらい。 安芸区で下校中の女児が殺害される事件が起きた三年前から、防犯意識が高まり、利用を希望する保護者が目立つようにもなった。 「ひろしまこども夢財団」は、県警の防犯情報を保護者の携帯メールに発信している。昨年一年間の発信は百八十四件。不審者情報が大半を占めた。 小学三年の長女が三篠児童館(西区)へランドセル来館する母親(38)は「子どもだけで安心して遊べる時代ではない。一、二年生と同じように預かってほしい」と訴える。 全国では同様の過密化に加え、待機児童も出ている。事故の多発も報告され、保護者団体は改善を求めている。厚生労働省は二月、今後十年間で定員を現在の約三倍の二百十三万人に拡大する数値目標を初めて掲げた。 児童福祉が専門の浅井春夫・立教大コミュニティ福祉学部教授は「施設に子どもを詰め込めば、多大なストレスをかけることにつながる。子どもの福祉を守る責任は行政にある。施設の増設という根本的な解決が必要」と指摘している。(西村文、新宅愛)
(2008.5.21)
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