安芸高田 全学年受け入れを継続 児童の「過密」などを理由に、安芸高田市の児童クラブ「イルカクラブ」に四年生以上を受け入れない方針を打ち出した市に、保護者たちが希望者全員の受け入れを求め、署名活動を展開した。市は方針を撤回したが、スペースの確保など環境整備は残されたままだ。市内の児童クラブなどは本年度から、指導員でつくる特定非営利活動法人(NPO法人)が運営。始動したばかりの法人のバックアップも含め、市はより積極的に子育て支援に向き合う必要がある。 ▽場所や要員 市の支援必要 市内計八カ所の児童クラブについて、市は昨春、三年生以下だった対象児童を、全学年に拡大した。子育て支援の拡充が狙い。だが、同市吉田町のイルカクラブでは想定外の事態が起きた。本年度の一年生登録が四割増え、定員七十人に対し九十六人が申請した。 安全管理で懸念 こうした状況に対し、まず市が懸念したのは安全管理だ。「定員以上に詰め込み、事故になったら大変」と担当課。市は三月半ば、イルカクラブに四年生以上を受け入れないと決め保護者に通知した。 厚労省は、七十一人以上が通う児童クラブなどへの補助金を二年後から打ち切る方針。これも市が今回、七十人定員にこだわる理由になった。 新学期を控え保護者は即座に反発する。千五百人を超える署名を市に提出。通知から約一週間後、児玉更太郎市長は当面の全学年受け入れを約束した。 児童クラブの規模については、厚生労働省が昨年十月にガイドラインを作成している。目安は「最大定員七十人、児童一人当たり一・六五平方メートルの面積確保」。これに照らすと、イルカクラブの定員は約五十人となる。 それでも保護者の要望は強い。「指導員を慕って通う児童がほとんど。全員を希望する施設で受け入れてほしい」。保護者会の曽利顕子さん(37)は強調する。 児童クラブの過密は全国的な問題でもある。厚労省や全国学童保育連絡協議会などの議論は「定員を設け大人数状態を解消し、人口密度を下げるため施設を小分けする」でまとまりそうだ。具体的には、空き教室などの活用が考えられる。 ただ、イルカクラブの児童が通う吉田小は容易ではない。校区には周辺からの転入が増え、パソコンや英語などの特別教室の需要もあって教室確保に困ることもあるからだ。 市は昨年度まで、児童クラブなどの運営を、現場指導員でつくる任意団体・市子育て連絡協議会(浜脇正枝会長)に委託してきた。本年度からは「基盤を強化しよう」と指導員有志でつくったNPO法人に委託先をバトンタッチした。 マンパワー不足 ただ、法人化しても全スタッフは三十人余り。理事が現場指導員を兼務するなどマンパワーは不足する。給与管理など事務作業も現場に降り掛かる。子どもたちの指導と法人運営を、限られた人材でこなすのは厳しいのが実態だ。 児童クラブや児童館の目的は、子どもたちが放課後を安全に有意義に過ごすことにある。市には、早急に環境整備の検討を始めるとともに、現在は指導員の個人的なネットワークに頼ってきた指導員の確保などで積極的にかかわってもらいたい。
(2008.4.10)
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