ケガをしたおかあさんのために、お医者をよびに行こうとした子象のディオは、みんなにたすけをもとめるのですが、だれもいうことをきいてくれません。ディオはこまってなきだしてしまいました。そのようすを見て気のどくに思ったのか、サルの船長はいいました。
  「わかったよ。舟にのせてあげるよ。だけどきみのおかあさんのためだぜ」
  こうしてディオは島のそとの陸地に出ることができました。
  陸地にあがったディオはおどろきました。見たことのない広さの地面がずっと遠くまで続いていたからです。
  心ぼそくなってきたディオは、はやくお医者を探そうとあせりました。けれどもどこにいるのかさっぱりわかりません。ディオはまたなきたくなりましたが、そのとき声がしました。
  「もしもしステキなぞうさん。だれかをお探しですか?」
  足もとを見るとそれは小さなきいろい花でした。
  「お医者さんをお探しのようですね。ぞうさんの顔を見てすぐわかりました。よかったら私がお医者さんのいるところまで案内しましょうか?」
  花はドンドンしゃべります。
  「そこでチョットおねがいがあるのです、ステキなぞうさん。そのりっぱなハナで私を引っこぬいてほしいのです」
  ディオはびっくりしました。
  「じつは私、仲間からはぐれてこんな海のそばに生えてしまったせいで、この前のあらしのときはホントにちぎれ飛びそうになったのです。どうか仲間がいる安全なところまで私をはこんでもらえませんか?」
  ディオは「やなこった」といいたくなりましたが、お医者さんのところに案内してくれるというので、その長いハナで土をほって、花を地面からそっと引きぬいてやりました。それからその花をあたまにのせてディオは歩き出しました。
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