その4 遠いカミナリ
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ぼくとおじいちゃんは岩見山へ登っている。おじいちゃんは岩見山のことを、わしの宝じゃというのだ。
ヤマセミのいた谷川からもとの山道へもどって、またおくへ向かって歩きだした。
ぼくのこしで、熊よけの鈴がチリチリと鳴る。道が登り坂になったところで、ぼくはふと立ち止まって耳をすました。ドドーという、遠いカミナリのような音がきこえたからだ。
「あれはなんの音?」
「行ってみたら分かるよのう」
おじいちゃんは笑いながらいった。
道が大きく曲がったとき、音は急に高くなった。
赤や黄色や緑が重なる木ぎの向こうに、まっ白い滝が見えた。
「わあ、滝の音だったんだあ」
ぼくは滝つぼの川原へおりていく道を走ってくだった。
滝は、切りたったガケのくぼみから、まっ白い水のたばになって落ちてくる。
「ドドー、ドドー」
地鳴りににた滝の音が、ぼくの体をゆさぶるようだ。時どきサ―ッと吹きおろす風といっしょに、滝のしぶきがぼくの体をすっぽりつつむ。
ぼくは滝つぼの川向こうを見上げた。そこはまっすぐに切りたったぜっぺきで、山がぽっかり割れたのかと思える高さだ。
(ゲームの中では、滝もぜっぺきもわけなくジャンプで登れるけど、ほんとうの滝やぜっぺきは、とても登れないよなあ…)
滝とぜっぺきをかわるがわる見上げていると、おじいちゃんがぼくの背中をそっとたたいた。そして、前に広がる滝つぼのあさせを指さしていった。
「ほら、あそこ。流れのゆるい砂のところを見てみろや」
おじいちゃんが指さす先を見て、ぼくはあっとさけびそうになった。
三十センチ近くもありそうな大きな魚が二匹、流れにむかって並んで泳いでいたからだ。
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