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  その1 ぼくのおじいちゃん
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 十一月はじめの連休に、ぼくはおじいちゃんちへやってきた。
  ぼくのうちは、広島の町なかにあるマンションの五かい。おじいちゃんちは県ざかいに近い山おくの村だからとっても遠い。
  だから、ぼくが一人でおじいちゃんちへ来れるようになったのは、なつやすの夏休みからだ。
  七十二歳のおじいちゃんは、田や畑をたがやしながら、たった一人でくらしている。
  おばあちゃんは三年前、病気でとつぜんなくなった。
  お父さんとお母さんは、町でいっしょにくらそうというのに、おじいちゃんは、
  「元気なあいだは村でくらす。病気になったときにはたのむわのう」
  というのだ。
  あけはなされたえん側で、ぼくはポケットに入れてきたゲームをとり出してやり始めた。
  まもなくおじいちゃんが、クワをかついで帰ってきた。
  ぼくを見るなり
  「和夫はここへ来る時にも、ゲームとやらを持ってくるのかい」と、あきれたようにいった。
  「そうだよ。これはぼくの宝ものだから、どこへでも持って行くよ。おじいちゃんにも、こんな宝ものある?」
  ぼくはいっきにまくしたてた。
  「宝ものか…」
  おじいちゃんは、しばらく考えてから、
  「あるぞ。わしの宝はあの山じゃ、岩見山よう」
  と、ましょうめんに見える、てっぺんの丸い山を指さした。山は赤や黄や茶色にもえている。
  「え、山が宝? 山の中に宝ものをかくしてるの?」
  ぼくはふしぎな気がした。
  「昼ごはんを食べたら、わしの宝を見に行こう」
  「えっ、あの山へ登るの? ぼく山登りはにが手なのに」
  「宝ものは見とうないんか。おもしろいものがあるんぞ」
  ぼくはしぶしぶさんせいして、おじいちゃんといっしょに岩見山へ行くことにした。
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