その4 点字
ふだんは何気なく通りすぎる通学路なのに、いくつもまがりかどがあることがわかった。車やじてん車が走ってくるたびに、マヤとかな子は何回も立ちどまった。さくら小学校の正門についたとき、マヤはいつもより何ばいも遠くに来たように思った。
小学校の正門の表札にふれながら、かな子はつぶやいた。
「マヤちゃんといっしょの学校に行けなくて、つまんない」
そのとき、
「あーら、白岩さんのおともだちなの。ようこそ」
校舎の中から林先生が出てきた。マヤのたんにんの先生だ。先生は笑顔で、かな子の手をとり、かたをかるくたたいた。
「ちょっと、しょくいん室にいらっしゃいな」
マヤとかな子が、しょくいん室のいすにこしかけていると、先生は戸だなから、少しあつめの白い紙をとりだしてきた。
「ほうら、あなたは読めるでしょ」
まっ白い紙に小さな点がぷつぷつうき出ている。かな子は両手をその上においた。左から右へ指先をずらしながら、顔をあげたまま、すらすら読んでいく。
「あっ、教科書の詩ね」
マヤが紙の上に指先をあててみても、点がいくつあるのか、どういう形をつくっているのか、さっぱりわからない。
「点字というのよ。盲学校の人たちは、この点字で勉強してるのよね。わたしたちも、もうすぐ『手と心で読む』というところでならうの。盲学校の教科書と同じだから、ふたりの宿題、いっしょにできるかもよ」
林先生は、ふたつの頭をかかえて、かるくこっつんこさせて笑った。ふたりも笑った。
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