| 
  
  
  その3 ガイドヘルパー 
 
  
 
 
 マヤが目の不自由なかな子をむかえにいくと、かな子のおかあさんがいった。
  「すみませんねえ、はじめてのおともだちに。ガイドヘルパーはむずかしいから、きょうはさんぽのつもりでつきあってくださいな」
  かな子はなれているように、左手でマヤの右ひじをもち、右手に白いつえをもった。マヤとかな子は少し歩きはじめたものの、ふたりの歩調を合わせるのは、なかなか大へんだ。
  「きょうは手をつないで行こう。どこ行きたい?」
  「わたしはバスにのって盲学校へ通うけど、マヤちゃんのさくら小学校に行ってみたいな」
  「ここから十分ぐらいよ」
  「近くていいね。毎朝、ねぼうできるね」
  六けんめのかどをまがると、犬がほえたてた。
  「こ、こわーい」
  かな子は、マヤにしがみついてふるえた。
  「だいじょうぶ。門の中にいるんだから、出てこれないよ」
  マヤがなぐさめると、かな子はおちこんだ声でいった。
  「見えないと、こういうときが一番おそろしいの」
  「でも、目の見えない人のなかよしは、盲どう犬じゃないの」
  「そうよ。盲どう犬はとくべつなの。わたし、大きくなったら盲どう犬といっしょに外国で勉強したり、世界中の旅をするのがゆめなんよ」
  かな子の声は、たちまちはずんだ。
  「だけど、盲どう犬となかよしになるためには、きびしい訓練いっぱいしなくちゃいけないんだって」
  「ふうーん、大へんなんだねえ。はい、こっちへ行くよ」
  「あっ、急に引っぱらないで。こっちとか、あっちとかいわないで、右とか左とかいってね」
  「そうか、ごめん、ごめん」
  ま夏のひざしがふたりにふりそそいでいる。マヤのひたいから、あせがどっとふき出た。
  |