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  その4 スズカねえさん 
 
  
 
 
 ぼくはブン。犬です。
  スズカねえさんが、かえってきました。いつもは遠くの町の学校にいってるのでうちにいないんだけど、ときどきかえってくるんだ。ぼくにあいにね。うれしくて、しっぽをふっています。
  ぼく、おねえさんにはなしてみたんだよ。このうちのとなりの公園に、宝物がうまっていること。でも、カスミおばさんもアキオおじさんも気がついていないこと。このまえ黒い犬と男の人が、宝をさがしにきたことなんかをぜんぶね。
  おねえさんは、ぼくのおちゃわんを見ていったよ。
  「あら、ブン。いいものつかってるじゃない」
  そうなんだ。これは宝のおちゃわんさ。
  「だれかが庭においていったみたい。ブンがはなさないのよ」
  カスミおばさんが説明してる。
  「もしかすると、ものすごい値打ちのものかもよ。どこからもっ
てきたんだろう」
  さすが、スズカねえさん。ちゃんとわかってる。
  そこで、さんぽのときに、おねえさんを公園につれていったんだ。虫がいるからいやだなんていわないで、おねえさんはぼくについて松の木のところまでいったよ。
  「ほらここだよ。この木の下に宝物があるんだ。あのおちゃわんも、ぼくの友だちのネコのタロとミミがここからほってきてくれたんだよ」
  木のまわりをぐるぐる走りながら、ぼくはなんどもほえたんだ。
  おねえさんはそんなぼくをじっと見ていたよ。そして、
 「わかったわ、ブン。ここになにかがあるってわたしにはなしているんでしょう」だって。
  やっぱりスズカねえさん、ぼくのことばがわかったんだ。
  ところがそのつぎの日には、「ごめんね、ブン。はなしのつづきはこんどきくからね」って、おねえさんはまた遠くの町にかえっていってしまった。
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