その3 タロとミミ
ぼくはブン。犬です。
うちのとなりの公園の宝、まだそのままさ。
ぼくの友だちにタロとミミっていうふたごのネコがいるんだけど、うちに来ていうんだ。
「宝のこと、どうするつもり?」
「はやくしないと、だれかにもっていかれちゃうよ」
ぼくもこたえていったさ。
「だって、いくらおしえても、カスミおばさんもアキオおじさんも気がつかないんだもん」
ふたりはしばらく考えてたけどね、
「いいことがある」
そろって声をあげたかとおもうと、あっというまにいなくなった。
つぎの日、タロとミミがもってきたのは、白いおちゃわんだった。青い色で草のもようがかいてあるやつ。
「これ、なに?」
きいてみると、
「ふたりで、ほりだしてきたんだ。古伊万里といって、ものすごい値打ちがあるものなんだよ」
「このおちゃわんを見れば、おたくのおじさんもおばさんも、びっくりするわよ」
さすが、タロとミミ。これで宝に気がついてくれるぞ。
ふたごのネコがかえってからしばらくすると、カスミおばさんが家からでてきた。
「あら、なに?」
おばさん、ぼくのまえにあるおちゃわんにおどろいている。
「いやだ。こんなきたないもの、どこからもってきたのよ」
きたないって、そりゃあ土のなかからほりだしたからよごれてはいるけどさ。
「もえないごみの日にださなきゃあね」
なんてこというんだ。だめだよ。これはとなりの公園にうまっている宝のひとつで、古伊万里のおちゃわんだよ。
「あら、ブンちゃん気に入ってるのね」
ぼくがほえるのを見て、おばさんはやさしくいった。
いまぼくは、これでごはんを食べている。
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