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  その2 黒い犬がきた 
 
  
 
 
 ぼくはブン、生まれて四カ月の犬です。
  ぼくのとくいなことは宝さがし。
  うちのとなりの公園に宝がうまってること、先週はなしたよね。でも、いっしょに住んでるカスミおばさんもアキオおじさんも、ぜんぜん気がつかないの。ぼくがいっしょうけんめいおしえてあげてるのにね。
  ところがこのまえ、別の犬の声がきこえた。「宝がこの家のとなりの公園にうまっています」っておしえてるの。するとすぐに、知らないおじさんが、黒い大きな犬をつれて公園に入ってきたんだ
よ。
  「宝は松の木の下です」
  その犬が、ほえていった。
  そこでぼくも、
  「そうだけど、うちのおじさんもおばさんもまだ気づかないんだよ」って、ほえたの。
  「そりゃあ、ざんねんだなあ。だけどぼくも宝さがし犬だから、ぼくのうちの人のほうがさきにみつけるかもな」
  こういってほえたのは、黒い犬。
  「そんなこといわずに、ほりあてたらうちにも少しおいていってよね」
  こうたのんだのは、ぼく。
  たぶん、ぼくとあっちの黒い犬のはなしあう声が大きすぎたんだと思う。うちのなかからアキオおじさんがでてきて、
  「ブン、しずかにしなさい」ってしかったんだ。
  「それどころじゃないよ。よその人が宝をさがしにきているのにさ」
  ぼくは、アキオおじさんにもおしえてあげた。
  でもね、近所の女の人が走ってきていったよ。
  「すみません。犬をしずかにさせてくれませんか。あかちゃんが、ねむったところなんです」
  ぼくは口をとじた。黒い犬と知らないおじさんはかえっていったよ。
  宝はまえのところにそのままさ。
  さあ、これからどうしよう。
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