その1 ぼくはすごいぞ
ぼくはブン。生まれて四か月の犬です。うすい茶色の毛並みで、黒い大きな目をしているんだよ。
アキオおじさんとカスミおばさんといっしょに住んでるけど、遠くの町の学校にいってるスズカねえさんもときどきかえってくるよ。ぼくの顔を見にね。
ところで、みんなにはとくいなことがあるでしょう。たとえば、水泳がじょうずだとか、ピアノがうまくひけるとか。
じつは、犬にもとくいなことがあるんだ。ピアノはひけないけどね、目の不自由な人のおてつだいがじょうずなのは盲導犬でしょう。警察の人といっしょに、事件のそうさや犯人さがしの仕事をするのが警察犬。ほかにも雪のうえでソリを引く犬だとか、ヒツジの番をする犬だとかね。
どうしてこんなことをはなすかっていうと、じつはぼくにもすごくとくいなことがあるんです。それは、宝さがし。
むかしばなしの『花さかじいさん』って、知ってるよね。おじいさんのかわいがってた犬が宝物のうまっている場所をおしえたっていうおはなし。ぼくもその犬と同じで、宝のありかがわかる犬なんだ。すごいだろう。
ぼくが住んでいる家のとなりは小さな公園になっていて、すべりだいと砂場とベンチがひとつあるんだ。その砂場のななめむこうの松の木の下に宝がうまってるんだけどさ、人間ってだめだよね。だれもそれに気がつかないの。ぼく、いっしょうけんめいおしえてあげてるのに。さんぽのときにはカスミおばさんに「あっちに行こうよ」って、ワンワンほえるんだけど、おばさんったら「公園は虫がいるからいやよ」だって。
ところが、この公園の宝に気づいた犬がほかにもいたんだ。
あっ、おばさんがよんでる。ごはんかな。ぼくいかなきゃ。つづきは、またこんどね。
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