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  その5 あそびにおいで 
 
  
 
 
 ぼくはブン。犬です。
  このおはなしをはじめたころは生まれて四か月だったけど、いまは生まれて五か月になりました。おしっこもちゃんとぼくのお便所でできるようになったし、まえよりも少しかしこくなったんだよ。
  けさ、ぼくが古伊万里のおちゃわんでごはんを食べてたら、ふたごのネコのタロとミミがあそびにきた。
  「あら、まだ気がつかないの」
  ミミがおちゃわんを見て、あきれたような声をあげた。
  「このうちの人って、よっぽど宝にえんがないんだね」
  タロはわらってる。
  「うちのカスミおばさんもアキオおじさんも、これをふつうのおちゃわんだと思ってるんだ。ぼくのおちゃわんになってるぐらいだもん」
  「見る目がないんだ」
  「せっかくわたしたちがほりだしてきた宝物なのにね」
  ふたごのネコは、すましていったけど、ぼくはうちの人たちがすきだからさ、むっとした。
  「でもね、スズカねえさんが気づいたよ」っていうと、
  「だけど、ここにはいないんだろう」
  「宝さがし犬は、ブンちゃんだけじゃないんだからね」
  そうなんだ。タロとミミがいうとおりなんだ。
  だから、みんなにもないしょでおしえとくね。
  海の見える駅で電車をおりて、そこから山のほうにむかってあるいて二十五分。庭に大きなハナミズキの木がある家。うちに住んでいるのは、カスミおばさんとアキオおじさんと遠くの町の学校にいってて、ときどきかえってくるスズカねえさんとぼく。家のすぐとなりには、すべりだいと砂場とベンチがひとつある公園があるんだ。宝は砂場のななめむこうの松の木の下にうまっているんだよ。
  とにかく、いちどあそびにきてよ。まってるからね。
 おわり
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