その1 さびれたどんぐり横丁
どんぐり横丁は、ぼくの家から歩いて十分の、琴原駅前にある。ぼくの街ができたころからある商店街で、そこに行けばなんでもそろう。それがどんぐり横丁の、売り、つまりセールスポイントだ。
けれどそういわれていたのは、じつは十年いじょうも前の話で、今ではすっかりさびれた商店街になってしまった。
というのも、近くに二十四時間えいぎょうのスーパー『モーニズ』ができたからだ。ここにくればたいていのものがそろう。
ほかにもホームセンターや、おもちゃ屋ができた。どれをとってもどんぐり横丁なんかひとのみにしてしまうような、大きなお店で、どんぐり横丁がさびれてしまったのもとうぜんだ。
今では、どんぐり横丁に行くのは、夏の夜店のときぐらいかな。すっかりさびれたどんぐり横丁も、夏の夜店にはそうとう力をいれている。きんぎょすくい、わたあめ、ポップコーン、フランクフルト……。くじびきだって、わなげだって、ぜーんぶ百円。けい品だってけっこうスゴイ。たとえハズレでも、百円コーナーのセコイけい品なんかじゃあなく、百五十円のカードがもらえる。ほかのお店じゃこうはいかない。夜店だけは、どんぐり横丁が一ばんなんだ。
そんなどんぐり横丁に、小さなお店がオープンしたときいたのは、九月のなかばだった。
「なかなか、おもしろいお店なんだ。三百円もって、四時半、駅家公園にしゅうごう、な」
コウヤのていあんに、ぼくとマサルはさんせいした。けれど、おもしろいお店ときいてもなんだか、ピンとこない。あのすっかりさびれたどんぐり横丁に、そんなおもしろいお店なんかできても、はやるのだろうか?
駅家公園、四時半しゅうごう。コウヤとマサルが行くんなら、まあ、行くだけ行ってもいいか。そんなかるい気もちでぼくは、どんぐり横丁に行ってみることにした。
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