中国新聞



  その1 


イラスト

 「あー、おもしろくなーい」

 オオカミは、をウロウロいていました。は、シーンとして、いきもののけはいすらありません。

 「いたずらしてやるやつもいない。ウォーン」

 オオカミは、のぼりはじめたにむかってきなをあけてほえました。そのに、ポトンとなにかがおちました。おもわずゴクンとのみこんでしまうと、オオカミはをクルクルまわしてたちどまりました。なにをのみこんだのかわかりません。をこらして見上げると木々がかさなりあったに、をたくさんつけた、まがりくねったがありました。

 「あのがオイラのにおちたんだな。まあ、しんぱいないだろう。ただのだからな」

 ところが、そのは、ただのではなかったのでした。オオカミは、なんだかつかれて、ねぐらにるとブツブツいながら、ねむってしまいました。よくあさ、オオカミはめざめると自分にといかけました。

 「オイラってだれだっけ。ここはどこだっけ。わからない、おもいだせない…」

 オオカミは、をのみこんだために、自分のすべてをわすれてしまったのでした。オオカミは、のろのろとねぐらをでるときだしました。とにかく、だれかにあって、自分のことをきいてみなくては、そうおもったのでした。いけものみちをくうちに、オオカミは、いきものたちのけはいにきがつきました。木々のかげや、くさむらので、こちらをうかがっているようです。それなのに、けっしてオオカミのにすがたをみせません。オオカミには、なぜかわかりません。

 「どうして、オイラにあいたがらないのか」

 オオカミは、ふしぎにおもいながらつぶやきました。そのとき、あたまのがしました。

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