風よおいで
4 春はくるの
公園の梅の花がさきました。
家のちかくの川どては、きいろい菜の花でいっぱいです。
「リサちゃん、チューリップのめ、まだでないわね」
びょうきがなおって、もどってきたおかあさんが、庭をながめながらいいました。
「そういえば、ことしは、ジンチョウゲのあまいかおりもしなかったぞ」
おとうさんがいったとき、居間のほうから、「ムニュ、ムニュ」という音がきこえました。
「ときどきへんな音がするけど、あれはなんだろう」
おとうさんが、首をかしげました。
リサは、居間の窓から庭を見ました。窓から見える遠くの庭は、春がきているのに、リサの庭は冬のままです。
秋におかあさんとまいた花のたねや、チューリップのきゅうこんのめもまだでていません。
リサとなかよしの、となりのマサトシくんも
「ぼくの家は、お花がさいているのに、リサちゃんち、どうしてお花がさかないのかね」
と、ふしぎがります。
こがらし一号が出窓の下にずっといることは、だれもしらないのです。
リサのおかあさんが病院に、にゅういんしているあいだ、さびしがりやのリサをはげましてくれた、こがらし一号です。花がさかなくても、ずっと、いてほしいとおもいました。
「おれがこのままここにいると春がやってこないから、そろそろかえるとするか」
ある日、こがらし一号は、そういって、たちあがりました。
「ずっといてよ」
リサはひっしでとめました。
そのとき、
「あれ、まだこんなところにいたの」
春一番が、リサの家の庭にはいってきていいました。
「わたしが、つれていくわね」
春一番は、リサがさよならをいうひまもなく強い風をおこすとこがらし一号をまきあげて、つれていってしまいました。
|