風よおいで
2 こがらし一号
窓を風がはげしくたたきます。窓ガラスがビリビリ音をたてました。
「はやく、ここをあけてくれ」
こがらし一号がさけびます。
リサはふるえました。
こんなことになるのだったらおとうさんとおかあさんについて病院に行けばよかったと、おもいました。
風がすこしおさまりました。
「ねえ、なかへいれてよ」
窓のそとから、パンダのような目が、のぞきこむようにしてリサをみつめています。こがらし一号にあうなんて、はじめてのことです。
「いっしょにあそぼうよ」
こがらし一号が、やさしく声をかけました。
「わたしをふきとばしたりしない?」
リサがこわごわたずねると
「ふきとばしたりしないよ。ともだちになりたくてやってきたのさ」
「ほんとうに?」
リサはいそいで、窓をあけました。
へやのなかは、きゅうに、さむくなりました。こがらし一号は、パンダのような目だけで、すがたは見えません。へやのなかをとびはねながら、ひとまわりしました。
「ぼくがきたからには、もう、さみしくはさせないよ」
こがらし一号は、ヒュル、ヒュルと風のメロディーをかなでました。たのしいメロディーをきいていると、窓のそとがすこしあかるくなりました。
「ただいま」
おとうさんが、明け方、病院からかえってきました。おかあさんがいません。
「おかあさんは?」
リサは、どきどきしながら、ききました。
「おかあさんは、とうぶんのあいだ、病院へ、にゅういんすることになってしまった」
おとうさんが、おかあさんのようすをはなしはじめたときでした。居間の出窓の下に、なにか「ドサリ」と、ものがおちた音がしました。
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