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 おばあさんの古い家
  
  3 おばけのオーちゃん 
 
  
  おしいれにいた、ちいさなおばけは、オーちゃんというなまえで
した。
 「ふんふん、まだこどものおばけじゃあないの」
  おばあさんは、おばけをみてもぜんぜんおどろきません。
  むかしは、この村のあちこちでよくみかけたものでした。
  ひさしぶりのおばけがめずらしくて、おばあさんがじろじろなが
めていると
 
  オーちゃんは
 「ぼくをつかまえるの?」
  と心配そうに聞きました。
  「おばけなんかつかまえたってどうしようもないだろう」
  おばあさんは笑いました。
 「だって、かあちゃんをつかまえた人間がいってたよ。このごろは、おばけが少なくなったから、高くうれるかもしれないって」
 「おまえのかあちゃん、人間につかまったのかい」
  おばあさんのことばに、オーちゃんは泣きそうな顔でうなずきながら
 「ぼくとかあちゃん、町のマンションにすんでいたんだ。ある日、とつぜん、人間がドタドタっとやってきて、かあちゃんをつかまえていったんだ」
  と、いいました。
 「かあちゃんが、いなかににげなさいといったんだね」
  おばあさんはやさしくいいました。
  オーちゃんは、口をきゅっとむすんでうなずきました。
 「かあちゃんはどうなるの」
  オーちゃんが、不安そうにおばあさんに聞きました。
 「なあに、おとなのおばけは心配いらんよ。そのうちひょっこりあらわれるさ」
  おばあさんは、だいじょうぶだよ、というようにほほえみかえしました。
 「わたしも、たったいま都会の息子のマンションから、にげだしてきたんだよ。どうだい、よかったらここでいっしょにくらさないかい」
  おばあさんがいいました。
  オーちゃんはうれしそうに笑いました。
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