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 おばあさんの古い家
  
  1 おばあさんの家 
 
  
  「まるで、おばけやしきね」
  おばあさんは、ためいきをつきました。
  そこは、おばあさんがずっとまえにすんでいた家でした。
  だれもすまなくなったその家は、草にうもれるようにかたむいています。
 
  これまでおばあさんは、息子と都会のマンションでくらしていましたが、やっぱりいなかのくらしがわすれられなくて帰ってきたのです。
 「ひどいものね」
  屋根には草やつたがからまって、かべが落ち、玄関の戸もこわれています。
  おばあさんは、なみだがでそうになりました。そのまま息子のマンションにひきかえそうかと思いましたが、せめて家のまわりだけでも、きれいにして帰ろうと思いました。
  おばあさんはエプロンをきりりとしめました。すると、少しだけ元気がでてきました。元気がでてくると、こんどは大きなこえで歌いたくなりました。
 
  草かり さっさ 
  なんでも さっさ 
  お家の まわりの 
  草かり さっさ 
  きれいなお庭が できあがり
 
 おばあさんは、こんな歌をなんどもうたいながら、いっしょうけ
んめい草をかりました。
  ひたいのあせをぬぐって腰をのばしたとき、家のまわりはすっきりときれいになっていました。
 「わたしって、もしかして草かりの名人かもしれないわ」
  おばあさんは、まんぞくそうによごれた手をパンパンとはたきました。
 「うーん、ついでに家のなかもそうじしたくなったわ」
  草のなかから、あらわれた家は、思ったほどいたんでいませんでした。
  そんなおばあさんを、家のやぶれたかべの穴から、じっとみつめているものがいました。
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