中国新聞

  第四話 れていた


 「て! あそこ。だれか、れてる!」

 はるちゃんがさしたると、かげでもないばたに、がうずくまっていた。

 それは、デニムのズボンにいTシャツを外国人で、きなリュックにもたれかかるようにして、をついていた。やけしたには、のてっぺんまで、がいっぱいふきでていた。

 自転車は、くてがんじょうそうだった。日本列島縦断でもしていたのだろうか。

「おにいさん、だいじょうぶですか?」

 よっこがおそるおそるたずねると、は、よっこを横目て、なくほほえんだ。

「ありがとう。にクラクラッてきちゃって。……あなた、すいませんけど、お、くんできていただけませんか?」

 は、五角形をした水筒をさしだした。外国人とはえないほど上手日本語だった。

「あのう、麦茶でよかったら、たいのがありますけど」

 はるちゃんが、小型魔法ビンのはいったを、背中からおろした。ところが、まだっているとっていた麦茶が、三滴しかないのだった。

「ごめんなさい!」

 はるちゃんは、りそうなで、何度もあやまった。

「オウ、ノウ。、ふきたいだったダケ。でいいノヨ。おっと、川におりる、ナイナイでしたね。こっちこそ、こっちこそ、ごめんなさいデース!」

 人は、しどろもどろになった。よっこは、決心した。はるちゃんに「」をしているようむと、いちばんまで、ターッとをもらいにった。



「ありがと、ありがとう……」

 は、よっこが水筒にもらってきたたいを、ごくごくとおいしそうにのんだ。

 それから、そのは、谷間にごろんとあおのけになって、ゆっくり呼吸をととのえながら、しばらく、をゆく見上げていた。

 そして、どうしたわけだか、その両方に、しぜんにがにじんできたらしかった。

「…………」

「…………」

 よっこたちは、どうしていいかわからなかった。はるちゃんは、 心配そうによっこをてきたし、よっこは、そのはるちゃんを見返すだけだった。

 谷間今日も、いつもとぐれがっていた。


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