中国新聞

   山本正さんの場合


 ピアノをこうとしてふたをけた、けんわっていたとしたら、あなたは、どうする?

♪♪   ♪   ♪♪

 世界的有名なピアニストの山本正さんは、どこにってもコンサートの何時間かはだれにもわず、演奏するピアノで練習することにしている。まわりのが「ピアノのくせを調べておいでなのですか?」とたずねると、さんは、

イラスト

「いえ。こうやって、ピアノと友達になっているんですよ。どんなしいでも、親友一緒だとえばがんばれるんです」

 と、える。だけど、この練習がいつもできるわけではない。ある飛行機れた。さんが会場についたのは、演奏会まる二十分前だった。タキシードに着替えたら、もうをする時間もなかった。

 そのピアノにはステージでめてった。会場めたたちの拍手み、ピアノののいすにって、かにふたをけた。すると……

 そこには、ふつうのけんはなかった。んでいたのはだった。いけんは、虫歯だった。

いよう」

 さんのると、さないでいた。心配顔二時間前だったら、のピアノにかえてもらえたのに。もう、それは、できない。

 「今日は、モーツアルトの幻想曲とショパンの歌曲。そんなにしいではないよ。どうにかがんばれない?」

問題は、最後です。ぼく悲鳴をあげちゃいますよ」

最後? ああ『い』か。これはい。よし。『トロメライ』 にかえよう。おさんにはその、あいさつするさ」

 演奏会たちは、のそばでくひそひそのようなかな調べに、をうばわれた。最後れかわっても、文句はなかった。

 演奏えたさん、きな拍手で、虫食ピアノにかって丁寧におじぎをした。


まえのページへ
ひょうしへ
つぎのページへ