中国新聞

  (二)えんこう



 のほとりで、出会ったことがあるはいるかな。

 とてつもなくサルににていて、言葉をしゃべるふしぎないきものに。

 あるぐれ、をわたっていた。

 は、びすぎておそくなってしまったので、いでろうとしていた。

 あたりはくなりかけていた。

 はあわてていたから、もとをよくていなかった。

「あっ」

 をあげてへつんのめった。

 なにかをふんづけてしまったらしい。

 ぐにゃりとしたかんしょくが、からつたわってきた。

 茶色っぽい、やわらかいものがうずくまっている。

 うずくまっているものがいたので、は、

「きゃっ」

 とさけんだ。

 それはサルににていた。

「いたいじゃないですか」

 サルがしゃべるわけはないので、これはサルではないと、った。

「ご、ごめんなさい。そんなところにうずくまっているから」

っていたんです。だれかがるのを」

 サルににた、そのいきものは、をとって、にっとった。

「そんなにぐことはないじゃないですか。いっしょにあそびませんか」

 はこわくなったので、そのいっきりふりほどいて、 一気をかけぬけた。

 しばらくってふりかえると、そのいきものは、もうにいなかった。

 ると、上流かってゆっくりといでいくいかげがぼんやりとえた。

 が「えんこう」という、のほとりに妖怪のはなしをきいたのは、それからずっとあとのことだった。

南区猿猴橋町あたりの妖怪

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