第2話 まさかさま
ピパって、子どものころのパパのことだよ。
まさかさまって知ってる?
いたずらっこの神さまで、人のいったことの、さかさまばっかり
いう。
だれかが暑いっていったら寒いって、楽しいっていったらつまん
ないっていう人がいるよね。それは、あまのじゃく。まさかさま
は、あまのじゃくとは、ずいぶんちがう。どこがちがうか、まあお
聞き。それは、こんなふしぎなお話。
ピパはトマトが大好きだ。子どものころ、庭に畑があって、夏休
みには、あおいのやら、まっかなのやら、たくさんトマトがなって
いた。
いちばんおいしいトマトの食べ方は、もぎたてガブリ。それに、
冷蔵庫でよーく冷やしたのもおいしい。
ピパはいつも、とれたてのトマトを、冷蔵庫に入れておいて、毎朝そいつをガブリとやる。そしたら気分がしゃっきりする。
ところが、ある朝のこと。
「食べたいな、トマト」っていいながら、冷蔵庫を開けたんだ。
ところが、ないんだよ。たしかにピパが冷やしておいたトマトが。
あれ、おかしいなって思ったら、だれかがいったんだ。
「トマトない、食べた」って。
「なんだい、あれはぼくのトマトだぞ」
ピパはその声にいいかえした。でも、そこにはピパしかいなかっ
た。いったいだれの声だろう。
それが、まさかさまの声なのさ。どうしてかわかる?
「食べたいな、トマト」
さかさまにいってごらん。
「トマトない、食べた」になるもん。
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