第1話
 風のたんじょう日
 
  
 パパも、もちろん、むかしは子どもだった。そのころのお話するぞ。
  子どものパパは、今のパパとはずいぶんちがう。だから、パパではなくて、ピパなのさ。
 
  
  
  その日は、ピパのたんじょう日。ピパのパパが仕事からかえってきたら、家族みんなでケーキを食べる約束だった。
  だけど、ピパはそれまで待てなくて、ピパのママに、「ケーキ見せて見せて、見せてよう」ってだだこねた。こっそりクリームを指ですくってなめたら、見つかって、しかられた。ほんのちょっぴりだったのに。
  つまんないから、ピパは夕方の公園にでかけていって、どろケーキを一人で作ってあそんだ。砂の山を作って、上をたいらにして、小石でかざったら、でっかいケーキのできあがり。
  だけど、たりないものがある。ろうそくがなくっちゃ、バースディケーキじゃない。ろうそくなんか、落ちてるわけないよなって思ったけど、さがしてみたら、公園のすみっこにいいものがあった。
  たんぽぽのわたげ。ふわふわのやつ。ピパはわたげをいつつ、どろケーキにたてた。そしたらまあるいわたげのかたまりに夕日があたって、ほんもののろうそくみたいだった。
  さあ、フウするぞって、ほっぺたをふくらましたそのときだ。風がピューッってふいてきて、わたげをとばしてしまった。
  ピパがぽかんとしていたら、頭の上で、電線がキュルキュルッ、って鳴った。まるで風が笑ったみたいだった。
  風のやつがいじわるしたのかな。そうじゃないと、ピパは思った。
  今日は風の子のたんじょう日なんだ。だからあの子も、フウしてみたかったんだよ、きっと。
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