(3)ぬれ羽色カラスの巻
ケーキを包んだふろしきを持って家をでた金ぱつキツネを、ウサ
ギのかあさんと子ウサギのミーリとリーナが取りかこみました。
「わたしがつくったケーキよ。返して」
かあさんがきっぱりといいました。
「しつこいなあ」
キツネはその場に包みを置いて、ウサギたちをおどすように
両手を高くあげました。
「あんまりうるさくいうと、ケーキのまえにおまえたちを食べちゃ
うぞ」
三人はあわてて逃げました。
キツネが追ってきます。
そのとき、バサバサと大きな音が聞こえました。キツネとウサギ
の親子が音のした方を見ると、ぬれ羽色カラスが包みをくわえてす
ぐそばの木のえだにとまったところでした。
「ケーキに油あげをのっけてはいけません。天ぷらなんてもっての
ほか」
うえからみんなを見おろしながら、カラスがうたうようにいいました。
「よかった。そうですよね」
ウサギのかあさんがすぐにこたえましたが、
「チョコレートもいちごも、いまいちです」
カラスはおなじ調子でつづけます。
「それじゃあ、なにをのっけるんだい」
金ぱつキツネが声をはりあげてききます。
「宝石です。赤や黄色や緑の宝石です。美しいケーキは美しいもの
でかざりましょう」
「カラスがガラスなんかのっけちゃあだめだ。油あげがいちばんだ
ろう。そのつぎは天ぷらだ」
「チョコレートがいいよーっ」
「いちご、いちご、いちご」
カラスとキツネと子ウサギのミーリとリーナがてんでにさけびま
す。ウサギのかあさんはため息をつきました。
「おだまりなさい。ケーキは宝石でかざってながめてから、
お紅茶といっしょにいただきます」
最後にカラスはこういうと、
ケーキの入った包みをくわえてえだ
からとびたちました。
|