2000.10.31
冷水浴びと薄い布団と
一人親家庭では、病気が困る。自分が寝込んだ場合もだが、子どもが病気になっても看病で仕事ができず、たちまち生活に困る。だから寒い冬は嫌だ。
離婚して親子三人の生活がスタートした年の冬、三歳だった娘が発熱した。五歳の長男は保育園。家に一人にもできず、車で連れて出た。両親の世話にはならないという条件で子どもを引き取った以上、親にも頼めなかったのである。
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イラスト・丸岡 輝之 | |
といって仕事場にも連れていけず、車のシートを倒して寝かせた。いつも抱いて寝る人形と数冊の絵本と飲み物を置いて。
仕事の合間に熱を測ったり、薬を飲ませに駐車場に行った。ドアを開ける度に目を覚まし「まだ帰れんの」と聞く娘に「もうちょっとじゃけえ」と答えるしかなかった。
この時ばかりは妻のいない不便さを思い知らされた。子どもにはすまないことをしている、と悔しかった。熱は二日で引いたが、娘はそれ以後「寂しくても家で寝て待つ」と言うようになった。
この経験から、子どもたちに風邪をひかせないように心掛けた。まず夜具の工夫だ。子どもは寝入りばなにビッショリと汗をかき、その後あがいて風邪をひくことが多い。だから多少寒がっても、寝る時の掛け布団はできるだけ少なくする。
「寒いよ」と言っても妥協せず「丸まって小さくなってじっとしていると、自分の体温で温かくなる」と我慢させる。ただし、私も子どもたちと同じ薄い掛け布団にすることが大切だ。
寒い時は、必ず目が覚める。子どもが寒いと感じる朝方には必ず私も目が覚め、その時に子どもたちにも掛け布団を追加してやれば良いのだ。
二つ目に、ふろ上がりに水をかぶる習慣をつけた。真冬でも上がり湯ならぬ上がり水を、肩から一気に五杯はかぶらせる。寒さに対する肌のトレーニング効果とともに、汗を早く引かせる効果もある。
寒い時ほど、しっかりぬくもらないと水はかぶれないので、子どもたちはゆっくりぬくもるようにもなった。これも親が見本を見せるのがコツだ。
ほかにも厚着をさせない、暖房器具を使わないなどしてきた。そのせいか、長引く風邪などにかかることなく育ってきてくれた。
少し乱暴な健康法かもしれない。妻がいたら絶対にできなかったことだ。どうしてももう一枚布団を重ねたがるのが母親。一歩引いて冷静に判断できるのが父親ではないかと思っている。
(一人親家庭サポーター=広島市)