共働きで希望者増、「横浜式」導入で二の足 「保育所に預けられないまま働き続けるのはもう限界」。広島市中区のパート社員大庭明奈さん(30)はため息をつく。2歳の次女は3歳の長女が通う保育所に入れず、1年以上も待機している。 「娘2人の教育費を考えると私も働かざるを得ない」と大庭さん。今は自宅近くの母に次女を預けて出勤。母は大庭さんの帰宅と入れ替わりで働きに出る。「母も体がきつい。横浜のように早く何とかしてほしい」と訴える。 広島市は「2015年4月までに待機児童ゼロ」を目標に掲げる。昨年度まで4年間で私立保育所整備に計約40億円を充て、24カ所を新設、定員を2977人増やした。 だが、待機児童は解消どころか増え続けている。「入園希望者が当初の想定を超えて膨らんだ」と市保育指導課の市本一正課長は頭を抱える。 なぜか―。総務省によると、12年の全国の共働き世帯は1054万世帯。10年で103万世帯増えた。子育て中の女性の再就職を支援するマザーズハローワーク広島の弓取純子統括職業指導官は「不況で夫が失業したり、夫の収入だけでは生活が苦しくなったりして仕事を求める女性が多い」と説明する。 そうした事情は同じだが、横浜市は先月、3年前に全国最多だった待機児童1552人をわずか3年でゼロにしたと発表した。 保育所を整備する企業への補助金を手厚くし、10〜12年度で計約1万人の定員増に。認可保育所に入れない子の受け皿として、面積や保育士数の基準を緩くした認可外施設「横浜保育室」を独自に整備。保護者の相談に応じて空きがある施設を探す「保育コンシェルジュ」も置いた。 横浜方式を参考に、広島市も今年4月から保育サービスアドバイザーを全8区役所に配置。しかし「保育の質を保てる保証がない」と、横浜保育室のような独自施設を整備する考えはない。市本課長は「地域ごとの状況を丁寧に分析し、家庭の事情に応じた調整で待機児童を解消したい」と力を込める。 政府は成長戦略の柱の一つに「働く女性の支援」を据える。早急な待機児童の解消策は何かが問われている。 (2013.6.1)
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