若者の雇用確保を急げ 【社説】「氷河期」が再びやって来たようだ。来春卒業する大学生の就職内定率が大幅に落ち込んでいる。 文部科学省などの調査では10月1日現在で57・6%と、前年同期に比べ4・9ポイントマイナス。調べ始めた1996年以降最低を記録した。2000年前後の就職氷河期を下回る厳しい環境である。 広島県内も同じ傾向だ。調査方法は異なるが広島労働局の集計では6年ぶりに5割を切っている。 状況がましだった今春でさえ、大卒者6人に1人が就職も進学もしなかったという。来春、行き場のない学生が社会にあふれかねない。深刻な事態といえよう。 本人や家族がつらいばかりか、社会にとっても計り知れない損失である。 就職が難しくなった第一の理由は、企業の採用抑制にあるのは間違いない。ひろぎん経済研究所の調査によると、県内企業の6割近くが来春の新卒採用を見送るとした。景気の先行き不透明感から採用を絞り込んでいるようだ。 中途採用が増えた影響も出ている。現場教育が要る新卒者の代わりに、即戦力として経験者を補う傾向が強まっているという。 海外進出を強めている企業では、外国人学生を優先するとも聞く。経済のグローバル化も就職難に拍車を掛けている。 政府も手をこまねいているわけではない。8月に新卒者雇用・特命チームを設け、人材を求める中小企業と新卒者をつなぐ政策を打ち出した。大卒後3年以内の若者を採用する企業への奨励金や大卒就職支援員の増員などである。 広島労働局では支援員を従来の5倍の15人に増やして担当する大学を決め、求人も開拓している。きめ細かな取り組みが効果を発揮するよう期待したい。 ただ、こうした施策には限界がある。人手不足が続く介護や福祉、農業などの分野にも若者が力を発揮できる場をもっと広げていく必要があろう。政府にも待遇の改善をはじめ将来に希望が持てるような支援策が求められる。 学生の側もいま一度、視野を広げてほしい。就職先選びで知名度や企業規模だけに振り回される傾向はないだろうか。自ら現場に足を運んで、やりがいのある仕事に出合うことが大切だ。 大手企業はリーマン・ショックの傷も癒え、体力の回復が目立つ。活力を維持するためにも若い社員を継続して採用することが欠かせまい。地域にも配慮した採用計画を望みたい。 中小企業にとっては優秀な学生を採用できるチャンスでもある。技術力や営業力を積極的にアピールしてはどうだろう。 卒業後も職に就けない人をサポートする仕組みも要る。広島県は研修と就業体験を組み合わせた取り組みを実施した。継続するなら既卒者にも心強いはずだ。 就職問題は雇用情勢や教育システム、産業構造などの要因が複雑に絡み合う。政府や自治体、経済界、大学がスクラムを組んで若者の雇用の場を確保してほしい。 (2010.12.2)
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