地域の文化 おいしく学ぶ
福山市教委は地元の食文化を取り入れた給食づくりを進めている。児童や近隣農家が育てた野菜を食材に使ったり、郷土料理を取り入れたり。メニューの工夫を通して児童、生徒に食の大切さを学ばせ、地元への愛着を深める。 福山市引野町南の旭丘小児童約400人は12日、梅干し入りのおにぎりをほおばった。梅干しは校庭で育つウメを利用。特別支援学級の児童4人が昨年6月に収穫し、実をシソ、塩とともに漬けて作り上げた。6年月岡聡太君(12)は「校庭の木から食べ物ができるとは思わなかった。甘みもあっておいしい」と話す。食材費が浮いた分、この日はイチゴがデザートになった。 市教委は本年度、校内で育てた野菜の給食への取り入れを可能にした。昨年7月から各校がカボチャやタマネギをカレーの具材にするなどの取り組みを始めた。枝広美恵子校長は「自分たちが育てた野菜を味わうことで、食べ物に感謝する心が育つ」と強調。旭丘小は今後、校内で育てるキャベツやタマネギも給食に取り入れる計画を立てている。 ▽安心・安全の観点 市教委は食の安心・安全や地域の農業振興の観点から学校給食での地産地消を進めている。食材の納入業者に対しては@市内産A県内産B国内産―と優先順位をつけて仕入れるように指示している。総食材に対する市内、県内産の割合は2008年度末で約18%。11年度末までに30%の目標も掲げている。 目標達成のためには食材の確保が課題。市内では現在、小学校78校、中学校8校で給食を実施し、学校や給食センターで1日計3万1千食分を調理している。全校で同じ日にカレーライスをメニューにした場合、ジャガイモは約1350キロが必要。献立を地域ごとにずらしてやりくりしているが、市教委は「時季によっては、県外産にどうしても頼らざるを得ない面もある」とこぼす。 ▽地元産確保へ試み 地元産の食材確保に向け、本年度から新たな取り組みを始めた。市教委や学校でつくる学校給食会がJAを通して地元農家から直接、食材を買い取ることで、計画的に一定の地元産を確保をする試みだ。本年度は駅家町や御幸町などの農家5戸が規格外や余剰分など市場を通さず野菜を近隣の学校へ持ち運んだ。新年度は瀬戸町の農家も参加。今後、数を増やしていく。 食材だけでなく、野菜や肉をご飯で覆う「うずみ」や「鯛(たい)めし」など地元に根付いた料理も積極的に採用している。給食に合わせ、料理の説明や出来上がった歴史を校内放送や掲示したプリントで説明している。市と親善友好都市提携を結ぶ韓国・浦項市のメニューも取り入れている。 福山市の小学校の給食費は1食当たり245円。広島市や近隣の府中市の220円などに比べてやや高めだ。市教委学校保健課の石口智志課長は「輸入品を使うなどすれば給食費を下げるのは可能。しかし、給食も教育の場。楽しく味わいながら地域をさらに知ってほしい」と話す。(山崎雄一) (2010.2.15)
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