食の大切さ 育てて納得
福山市箕島町の箕島小が本年度、大豆や小麦を栽培、収穫し加工食品をつくる学習に取り組んでいる。時間をかけてしょうゆや豆腐、パンなど身近な食材が食卓に並ぶ過程の体験を通じて、一つの物がさまざまな形へと変化することを学ぶ狙いだ。 12日、4年生20人は学校近くの広さ約1500平方メートルの畑に足を運んだ。「さやの回りに毛があるぞ」「来週収穫できそうだ」。前日の雨でぬかるんだ畑に足をとられながらも動き回り、収穫間近に育った大豆を確認した。19日ごろに収穫する。同じ日、3年生は来年6月の収穫を目指し小麦の種まき作業をするという。 ▽水やりや草抜き 4年生は6月に200粒の種をまいて栽培を開始。経験のある地元農家の指導を受けながら、脇芽を摘んだり、夏場の水やりや雑草抜きをしたりしてきた。大豆は収穫後、2、3週間乾燥させ、加工作業へと移る。 7月、家族への聞き取りやインターネットを使ってどんな大豆製品があるか学習した。豆腐、しょうゆ、みそ、納豆…。何に加工するか全員で意見を出し合った。 収穫した一部はきな粉へ加工することはすでに決まっている。12日は、教員が持参した大豆で製粉作業を事前に体験。三宅大雅君(10)は「力がいる。食べるまでにはいろいろな作業があるね」と石臼を回した。 周辺に畑が広がる箕島小では、低学年がナスやトマト、キュウリ、地元特産のホウレンソウ栽培を体験している。「栽培の苦労だけでなく、食卓に並ぶまでに多くの人の手、時間がかかっていることを理解してほしい」。横山謙治校長(54)は取り組みを始めた理由を話す。自給率の低い大豆や小麦を選んだのは、身近な生活が日本だけでは成り立っていないことを知るためでもあるという。 ▽移り変わる特産 箕島小がある箕島町は、かつては島だったが、明治初期に干拓で陸続きに。1976年には近くを流れる芦田川に河口堰(ぜき)が稼働し始めた。取り巻く環境の変化に応じ、養殖ノリからホウレンソウへと特産品も移り変わった。 「知恵や工夫で姿を変えた地元への愛着を深めてほしい。加工品づくりが自分たちの町の歴史や将来について考える一つのきっかけになれば」。横山校長はそんな願いも込める。小畠将紀君(10)は「大豆はいろいろな物に変わる。何が食べられるのか楽しみ。みんなでじっくり話し合いたい」と目を輝かせた。ひざ丈まで育った大豆は3月までに、児童の食卓に並ぶ。(山崎雄一) (2009.11.16)
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