中国新聞


海っ子 山っ子 「積極性」磨く
小規模校の交流支援事業2年目 廿日市市


 海と山という環境が異なる小規模校同士の交流を通じ、子どものコミュニケーション能力を養う廿日市市の「チャレンジ学校づくり支援事業」が2年目を迎えている。交流先の児童宅での民泊や地域の伝統文化を学ぶ体験学習を重ね、「子どもが積極的になってきた」と保護者の評価も上々だ。(山本秀人)

 体験重ね成長

 「あんこが真ん中にいくようにね」。11日、旧佐伯町にある浅原中央活性化センターで、女性会メンバーがカタラの葉を使った「かたらもち」の作り方を児童に伝授した。児童24人のうち5人はセンターに隣接する浅原小の3、4年生。残る19人は市沿岸部にある金剛寺小4年生だ。

 ▽未知の環境対応

 両校は、学校づくり支援事業で昨年度に交流を始めた。事業は児童数が少なく、同学年の子どもと触れ合う機会が少ない小規模校が対象である。山間部の浅原小と沿岸部の金剛寺小、同じく山間部の吉和小・中と島の宮島小・中が交流。互いの地域の伝統文化に触れ合い、児童の行動力やコミュニケーション能力を養う。

 市教委の正留律雄地域連携推進員は「小規模校の児童の中には、高校進学時に大集団に戸惑うケースもある。小さなころから未知の環境に対応できる力をはぐくみたい」とする。

 特色の一つが交流先の児童宅での民泊だ。8月上旬、浅原小で二人だけの4年生、佐上季恵さん(9)と正木瞳子さん(9)は、金剛寺小4年の久保田祐美さん(9)の自宅に1泊した。

 3人は一緒に夕食のカレーライスをつくり、「友だちが増えてうれしい」と短い共同生活を楽しんだ。祐美さんの母親の博美さん(39)も「うちの子は少し人見知りするところがあるけれど、積極的になってきた」と受け止める。

 ▽「友人が増えた」

 交流メニューは、各校が保護者や地域住民と実行委員会を発足させ、知恵を絞る。

 江戸時代の茶人上田宗箇(そうこ)が3年間隠居していたゆかりの地・浅原でのお茶体験、金剛寺小に近い地御前海岸での干潟の生き物観察…。合併で瀬戸内海から西中国山地まで広がった市域を知る狙いもある。

 宮島小・中と吉和小・中との交流でも、これまでに宮島の氏神祭でみこしを担いだり、吉和の清流で沢登りに挑戦したりした。

 宮島小・中PTA副会長の櫛田多実子さん(45)は「宮島のように子どもが少ない島では、幼稚園から中学校までずっと同じ顔ぶれ。学校間の交流を通じて新しい友だちづくりができる」と喜ぶ。

 市教委のアンケートでは保護者から「同年代の友人が増えた」などの好意的な声が寄せられた。金剛寺小児童が親と一緒に浅原の祭りに参加し、家族ぐるみの交流に発展したケースもあるという。

 市教委は本年度、保護者アンケートを実施し、「体験を通じて子どもが成長したか」など19項目を点数化して事業を評価。来年度以降の事業に役立てる。浅原小の松浦伸二校長は「児童が主体性を身につける場にしていきたい」と話している。

(2009.9.28)

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