中国新聞


生雲小・山口大フレンドシップ事業 山口県阿東町
児童ら人間関係学ぶ


 ■山里に活気 交流6年目

 山口県阿東町の生雲(いくも)小(江藤千恵子校長)の児童と、山口大教育学部の学生が交流を図る生雲小・山口大フレンドシップ事業(IYFP)が軌道に乗っている。学生は一年間、小学校を訪れて、児童と学び、遊ぶ。交流は山里に活気をもたらし、教員を目指す学生には適性を考える場ともなっている。交流は今年で六年目に入った。(有岡英俊)

 初めての顔合わせとなった今月十五日の紹介式。学生三十三人が「一発芸」を披露するなど思い思いに自己紹介した。「今年もいっぱい勉強や遊びを教えてもらいたい」。この日を心待ちにしていた子どもたちから笑い声が上がった。式の後、学校農園で一緒に田植えをした。

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山口大生と一緒に田植えをする生雲小の児童。お兄さんたちとの作業に自然と笑顔があふれる

 生雲小の児童数は三十九人。一、二年生と三、四年生が複式学級の山間部の小さな小学校だ。IYFPは故彌政久祐前校長が「児童は外部との関係が限定されがち。大学生との交流を通して広い人間関係をつくる学習に役立てたい」と同大教育学部に提案したのがきっかけで、二〇〇〇年度にスタートした。交流の契約期間は三年。本年度は交流が始まって六年目で、二回目の契約期間の最終年にあたる。

▽1年間に100日

 運動会や発表会などの学校行事に参加するだけでなく、授業も参観。学年や授業によっては、個別学習の補助指導をしたり、図工で表現方法のアドバイスをしたりする。一年間で百日以上通った学生もいる。

 生雲小のPTAにあたる愛育会の田中浩二会長(41)は「子どもたちがよく学校の話をするようになった。地元の祭りでも一緒にみこしを担いだり、学校の行事などを通して、町に活力を与えてくれる」と話す。地域の活性化にも一役買っている。

▽学生延べ150人 地図

 昨年度までに延べ百五十人以上の学生が参加した。学生たちにとっては、授業以外での子どもたちとの接し方など学校現場を肌で感じることができる。参加二年目の四年中野陽介さん(21)は「教師になるかどうか悩んでいたけど、一年間を通し、子どもたちと接することで自信が持てるようになった」と話す。

 教科の教え方に重点を置く二週間の教育実習と違い、将来教員を目指す学生らの教員として適性を考える機会にもなっている。

 近年、学校現場では、家庭、地域社会と連携して子どもたちの社会的認識を培い、生きる力を育てる「開かれた学校づくり」が進んでいる。

 児童らの人間関係づくりをきっかけに始まったIYFPは、五年間の交流・実践の結果、学生たちを「地域の教育力」として位置づけられるまでになった。

▽専門性生かす

 本年度からは学生たちを教育実践を充実させるための「学校支援ボランティア」として、学生の専門性を生かした提案を授業や行事に盛り込むことを検討している。職員室にホワイトボードを設置し、出席した学生がどこで、何をしているか一目で分かるようにした。

 これまで学生たちは一つの学年を担当していたが、今回から低学年と高学年の複数学年を受け持つ。江藤校長は「児童らが人間関係を構築する上で、ハードルを高くした」と狙いを明かす。

 あくまでも教育の主体は学校であり、その主人公は児童である。学生たちを基礎学力の定着や体力向上に体系的にどう生かしていくか、これからも試行錯誤は続く。

(2005.5.27)


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