三次市とJA、生産者が連携
三次市とJA三次、生産者が連携し、児童を対象とした食と農の教育に力を入れている。児童は農作業や給食の地産地消メニューなどを通じ、食を支える農業を知り、身近な生産者が作る新鮮な地元農産物への愛着を深めている。(余村泰樹) ▽「命支える誇り」を継承 灰塚小児童対象の食育イベントが1日、みらさかピオーネ生産組合の収穫期を迎えたブドウ畑であった。1〜6年生15人が参加した。 「ブドウの表面の白い粉は新鮮さの証拠。落とさないで」と中山佳樹組合長(36)。白い粉が病気を防ぎ、新鮮さを保つ天然のワックスの役割を持つことを教えた。6年重本達哉君(11)は「農薬と思っていた」と驚いた表情。JA三次職員からは剪定(せんてい)やジベレリン処理など栽培方法も学んだ。 収穫後は市食育推進係の下野真弓係長が栄養について指導。「皮には目の疲れを取り、血液をさらさらにするポリフェノールがたくさん」「毎日200グラムの果物を食べよう」などと語りかけた。児童はピオーネ入り一口パイや、皮も入れたサラダの調理を体験した。 ▽食べ残し減る 「ピオーネは地元特産だけど、子どもが口にすることは少ない。親しみを感じ、もっと食べてくれるようになれば」と中山組合長。下野係長も「地元にはよい食材がたくさんある。身近でとれた旬の食材は体にもよいので、しっかり食べてほしい」と力を込める。 学校給食への三次産農産物の活用にも力が入る。市は2007年度に「市食育推進計画」を、JA三次は08年度に「食農教育プラン」を策定。06年度に約20%だった給食への三次産の野菜・果物の利用割合を12年度に50%まで引き上げるなどの共通目標を掲げる。 既に08年度は約32%に上昇した。給食に使った野菜の生産者を写真で紹介したり、生産者と一緒に給食を食べたり…。作り手の顔が見えることで、児童の食への関心が高まり、食べ残しが減る効果が挙がっている。 8月下旬には、学校給食調理場の栄養士がJA三次の料理グループから、郷土の食材を使った料理を学んだ。地産地消をさらに進める狙いだ。 ▽「心を豊かに」 農作業体験はJA三次が中心となって進めている。09年度は、小学校の総合的な学習の時間などを使って市内16カ所で、米や大豆、サツマイモなどの種まきから収穫、調理まで教える。桑原謹二副組合長は「食べ物を作る大切さを知らせ、心を豊かにしたい。地域の過疎・高齢化が進み、農業が地盤沈下する中、次世代に地域や農業を大切にする気持ちをはぐくんでほしい」と期待する。 県食育推進会議の会長を務め、市の計画とJA三次のプラン両方を取りまとめた県立広島大の加藤秀夫教授は「食と、食を提供する農は生きるための基本。食育を進めるには農の参加は不可欠で、三次市は行政とJAがうまく連携している」と評価。「三次は農業に触れる機会に恵まれ、食べ物がどうできていくか実体験できる。農業の後継者育成の観点からも、命を支える農への誇りを小さいときから教えることが大切」と指摘している。 (2009.9.16)
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