中国新聞


「弁当の日」子ども奮闘
自ら調理 学校へ持参


 子どもが自分で作った弁当を学校に持ち寄る「弁当の日」。取り組む学校が増えている。栄養の知識や工夫がもたらす向上心、そして親への感謝…。弁当作りが与えてくれるものは多い。

 ▽工夫・努力が成長もたらす

 二月二十三日、島根県川本町の川本小。五年生の教室では、全員の弁当を机に並べ、品評会が始まった。昨年十月から始めた弁当の日はこれで三回目だ。

 担任教師に促され、苦労や工夫した点を報告する。誇らしげに胸を張る子、恥ずかしそうに小声になる子…。「前回よりレベルアップ」が全員の目標だ。

 「この前は野菜が足りんかった」と反省する岡本和樹君(11)は、ピーマンのいため物を加えた。吉村尚幸君(11)は、好物のから揚げとウインナーをぎっしり詰めた弁当。「茶色いなあ。失敗したかも」と笑う。

 弁当の日は、香川県の小学校で始まった。二〇〇一年の開始以来、食育の考え方とともに全国の学校現場に広がり、今では約三百校が取り組む。

 昨年四月の川本小のPTA総会。日高史雄校長が「秋から弁当の日を始めます。親は一切、手や口を出さないで」と宣言した。「給食があるのに」「包丁でけがをするかも」「親が作った方が早い」…。保護者から異論が噴き出した。

 それでも踏み切った理由を、日高校長は「自分なりの工夫や努力が成長のきっかけになる」と明かす。「年一回のイベントにせず何度かやることで、成長が雪だるまのように太っていく」。三回の実践で、日高校長の推論は確信に変わった。

 夜明け前の午前五時、春木さくらさん(11)=五年=の家を訪ねると、台所で弁当作りに熱中していた。

 献立はオムライスとサラダ。友達と同じメニューで出来栄えを比べるという。母親の英代さん(45)は、わが子の奮闘をこっそりのぞいた。「普段は目覚まし時計を二個掛けても起きないのにね」と目を細める。

 研究熱心にもなった。図書館で料理本を書き写したり、スーパーで配られるレシピをノートに張ったり…。共働きの両親に代わり、二年生の弟の昼食を作る機会も増えた。

 給食の時間、さくらさんは満足そうにオムライスをほお張った。「ソースを自分で作った友達がいた。今度は頑張ろう」。小さな目標を胸に抱いた子どもたちは、親や教師に見守られて成長していく。(石川昌義)


親への感謝も 中国地方では39校 

 弁当の日は、誕生から9年で全国に広がった。中国地方では、小学校から大学まで39校が取り組む。
 山口県立大(山口市)の弁当の日は、学生が自作のおかずを一品ずつ持ち寄る。看護栄養学部の園田純子講師は「人のために料理するやりがいも感じられ、人間関係が充実する」と強調する。
 雲南市では、市内の小中学校の3分の2に当たる18校が昨春から始めた。狙いは「キャリア教育」だ。
 市教委学校教育課の原元宏地域教育コーディネーターは「農家の子には、農作物を大切にする心と親の労働への感謝が生まれる。農家の子でなくても、健康や生活リズムを自己管理する力は、社会人として必要」と力を込める。


(2009.3.3)

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