広島市 試行本格化
広島市教委が来年度から全140公立小学校で独自の「英語科」を実施するのを控え、6月から約6割の小学校で試行授業が始まった。担任とともに教壇に立つのは、一般公募で選ばれた非常勤の「英語指導アシスタント」(AIE)。ボランティアとして地元の大学生や私立学校も授業に加わり、地域が新教科を支えている。 「ビッグ・ボイス(大きな声で)、ビッグ・スマイル(大きな笑顔で)、アイ・コンタクト(目と目を合わせて)」。AIEの吉岡ゆかさん(39)が、児童に呼び掛けた。古市小(安佐南区)6年3組の英語の授業は、担任の坂本明美教諭(50)と2人一組のチームティーチングで進む。 ▽海外経験生かす 吉岡さんの役割は、主に英語の発音。通算約9年の海外生活で培った現地人さながらの英語が教室に響くと、反復する子どもの声も次第に弾んだ。あいさつ、歌、会話、ゲームなど盛りだくさんの授業を終えると、内田直幸君(11)が「日本語でしゃべるより面白い」と興奮気味に話した。 広島市の小学校英語科は、聞いたり話したりする英語力の基礎を養うとともに、コミュニケーション能力の向上を目指す。AIEは、英語指導の専門教育を受けていない小学校教諭が授業をスムーズに進めるために導入された。担任と2人一組での会話などで効果を発揮している。 ▽主婦の社会貢献 市教委が昨年8月から約4カ月間、語学力を条件にAIEを公募すると、60〜80人の枠に対して230人が志願した。応募者の半数以上は、吉岡さんのような30、40歳代の女性だった。 主婦で2児を育てる吉岡さんは「下の子が2歳になって少し余裕ができ、語学力で社会貢献したいと思った」と動機を話す。市教委企画課は「予想以上の反響。優秀な人材を確保でき、新教科の滑り出しにプラスになる」と喜んだ。 英語科には、週1回の45分授業とは別に、英単語に触れる週3回の帯時間(15分)授業を5時間目の前に実施する。ここでは地域ボランティアが活躍している。 ▽私学から申し出 私立の広島城北中学・高校(東区)は、今月から試行授業を始めた戸坂小など地元の3校に対し、オーストラリア人の外国語指導助手(ALT)の派遣を申し出た。城北中・高の福原紘治郎校長は「私学が築いたノウハウを地域に還元する良い機会」と強調する。 早稲田小(東区)では、近くの広島女学院大から教員免許を持つ大学院生と帰国子女の学部生の計5人が通う。CDの音声をまねて児童と一緒に発音するなどして、授業に加わる。学生を見守る林桂子教授(英語教育)は「学生たちも、より実践的な場で指導力を養える」と相乗効果を期待している。(藤村潤平)
(2009.6.29)
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