元教師、子育て支援へ開業 広島市立小学校を今春退職した元教師の女性二人が、学童保育の対象外となる夜間の託児施設と、不登校に悩む子どもや家族の相談室を、相次いで開いた。三十年以上の経験を生かし、地域の子育て支援拠点をつくろうと張り切っている。(石川昌義) ▽夜間託児施設・東条さん 学童保育の枠外 受け入れ
広島市佐伯区の小学校で教頭を務めた東条典子さん(55)は四月初め、JR新井口駅(西区)に近いマンションの三階に託児施設の看板を掲げた。「放課後児童預かり サポート・託」。市の学童保育の枠外となる小学生を主に受け入れる。 広島市の学童保育は、小学三年生までが対象で午後六時半まで。共働き家庭が増えた近年は利用希望者が多く、過密状態の地域もある。 「勤めが夜遅くなった時に困る」「四年生になっても通わせたい」―。長年、保護者のそんな声に接してきた東条さん。幼い息子を実家に預け働いた自身の経験も、開所に向け背中を押した。 「自分がキャリアを重ねることができたのも、家族や周囲のサポートがあったから。いつまでも『子どもが仕事の支障になる』という社会では悲しい」と話す。 3LDKの部屋に絵本や図鑑、パソコンをそろえた。土曜日には、美術館や博物館に児童を連れ出す予定も。東条さんは「子どもたちが豊かな経験を積む場所にしたい」と意気込む。 ▽不登校相談室・野村さん 心に余裕持てる居場所に 広島市東区牛田旭の貸店舗に不登校相談室「親と子の相談所 芽ばえ」を開くのは、野村美幸さん(60)。東区の小学校を定年退職した。 野村さんが不登校の子どもの支援を志した契機は十数年前。不登校気味だった児童への対応について、同僚教諭や保護者の相談に応じたことだった。 子ども、親、そして教師も疲れ果て、共倒れに陥りそうな現実がそこにあった。「学校と家庭の中間に居場所をつくれば、心の余裕が生まれるはず」。大学時代に心理学を専攻した野村さんは一九九九年、学校心理士の資格を取得。カウンセリングの実践を積んだ。 「居心地のいい場所に」と児童書やCDをそろえた。退職教員の仲間に声を掛け、不登校児童が生け花や茶道を学ぶ教室を開く計画もある。「退職しても元気いっぱい。社会の役に立ちたい気持ちは、現役時代と変わらない」。再スタートは希望にあふれている。
(2009.5.12)
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