広島でフォーラム 子育て支援の分野で、市民と行政の「協働」が進む東京都世田谷区。広島市中区で十三日にあった「次世代育成支援協働フォーラムinひろしま」に講師として出席した世田谷区子ども部の田中茂部長(52)と、特定非営利活動法人(NPO法人)「せたがや子育てネット」の松田妙子代表(37)は、対談で互いに意識改革する必要性を訴えた。(平井敦子) ■東京都世田谷区子ども部長 田中茂さん ニーズつかみ調整役に
民間非営利団体(NPO)との協働のきっかけは、三年前、母親たちが作ったガイドマップを知ったこと。 マップは「どこの店がおいしい」などの主観が入り、行政には製作できない性格のもの。しかし、保護者に必要な情報が満載で、見た瞬間に「負けた」と思った。子育て支援に必要なきめ細かさは、NPOには勝てない、と分かった。 任せるべきものは任せようと、昨年はNPOに子育ての情報冊子の作製を委託した。公共性に配慮しながら親の目線に立った冊子になった。 それから、NPOとの対話が始まった。 新しい施策を打ち出すには、多くの要求の中から、真のニーズを見極めなければならない。母親たちとの議論によって、それが見えてくる。議論を通じ、未熟児のいる家庭を対象にしていた産前産後の家事援助事業を、全家庭に広げた。 対話をした上で進める「協働」とは。 事業委託や補助金の交付がすべてではない。議論を通じて、互いの役割分担を明確にするのが重要だ。子育て支援を行政だけが担うのは無理。行政マンは、事業を自分で実施するだけでは駄目だ。地域の人材に活動を広げてもらう調整役として、裏方に徹する新たな能力が求められている。 ■せたがや子育てネット代表 松田妙子さん 活動担う力 親の側にも
世田谷区との対話のきっかけとなる「子育て応援口コミガイド」を製作した。 行政のガイドマップは、公的施設の電話帳の域を出ていない。私たちが欲しいのはこんなんじゃない、と思ったから、独自のマップを作って、持ち込んだ。 行政に声を届けるにはどうすればいいのか。 二年前に「せたがや子育てネット」を立ち上げた。子育てグループ約百五十団体のネットワーク組織。いろいろなグループの課題を把握し、行政に声を届ける窓口になるのが狙い。個人や自分のグループだけの問題を訴えても、地域の子育てが変わっていかないと思った。行政と議論するとき、後ろに百五十団体がいることが耳を傾けてもらう材料になる。 「協働」に向け、市民に必要なことは。 親を、支援の受け手側だけにしない双方向の子育て支援を提案したい。出産後間もない母親は、自分の子育てで精いっぱいかもしれないが、出産を控える妊婦に対しては、最も身近なアドバイザーになれる。 行政から支援を受けると同時に、自分たちにできることも多い。それを気付かせてくれるのが行政の仕事。支援の担い手にもなれる親の力を信じてほしい。 (2006.10.21)
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