中国新聞


低学年から英語体感
少人数で体操や会話 山口県上関の2小


 早期から英語に親しみコミュニケーション能力の素地をはぐくもうと、山口県上関町教委が小学校の外国語活動(英語)に力を入れている。本年度からは、学習の自由度を確保するため、上関、祝島の2校が文部科学省から「教育課程特例校」の指定を受けた。少人数学級の利点を生かした取り組みの効果や課題を上関小で見た。(久保田剛)

 ▽国の特例校指定 独自の授業を確保

 DVDを見ながら十人の児童が一斉に体を動かし始めた。両手を広げて「ホワッツ ユア ネーム」。頭を抱えて「アウチ!」―。二年生の教室。朝の十五分間、児童が担任教諭と楽しむのは「英語体操」である。

 この日は、毎週金曜日の英語デー。「ハウ アー ユー」「アイム ハングリー」。六年生十二人の授業では、外国語指導助手(ALT)パトリック・ミッチェルさん(41)の質問に児童がすらすらと答えた。絵に隠れたアルファベットを探すゲームでも順番がすぐに回り、ALTや担任との一対一の会話が多い。

 ▽9割が「楽しい」

 「恥じらいがない時期から英語を話して抵抗感をなくす。その後の学習に与える影響は大きい」。町教委教育文化課の渡部靖徳課長補佐(52)は、中低学年からの英語教育の意義を強調する。三―六年生を対象にした昨年度のアンケートでは、九割以上が活動を「楽しい」と回答した。

 ALTの導入で芽生えた児童の英語への興味を伸ばそうと、町教委が外国語活動を本格的に始めたのは二〇〇六年度。総合的な学習の時間などを充ててきた。

 しかし、二年後に全面適用される新学習指導要領は五、六年生の外国語活動を必修化する一方、総合的な学習に外国語を取り入れる場合は、異文化理解などを探究する内容に制約するという。四年生以下が引き続き総合学習でコミュニケーション能力に主眼を置いた外国語学習をするためには、独自カリキュラムが組める特例校の指定が必要だった。

 外国語活動で学んだ他者と積極的にかかわる姿勢は、別の教科にも生きる―。町教委にはそんな狙いも。全児童が上関中に入学するため、中学教諭との情報交換や共同授業も進めている。

 ▽観察で成果判断

 課題も残る。外国語活動は、国語などの正式な「科目」ではないため、成績評価はない。上関小の教諭の一人は「どの程度身に付いたか、判断するのは簡単ではない」と明かす。児童の受け答えで評価するのか、テストを実施するのか。町教委は「何度も教諭とやりとりができる上関小の場合は、十分な観察で評価できる」と強調。教諭にはスキルではなく、目と目と合わせて話しているか▽声は大きいか▽恥ずかしがっていないか―の点に注目するよう求めている。

 教科書がないため、教諭の負担も大きい。同校では、文科省が作成した高学年用の「英語ノート」を参考に、中低学年の教材を考案している。

 白木克己校長(54)は、検証の必要性を認めながらも、「流ちょうではない英語を懸命に使おうとする担任の姿が、児童のよいモデル。スキルより伝えようとする意思が大切と気付かせることにつながっている」という。

 再び六年生の教室。「先生がオーバーアクションで面白い」「別の先生になったみたい」。授業を終えた児童が、感想を口々に教えてくれた。


クリック 小学校の英語教育 5、6年生は2011年度から週1コマ(45分)が必修化。本年度から2年間は移行期間とされ、各校で時間数に差がある。上関小の場合、3―6年は週1コマ、1、2年は月1コマ程度を実施中で、すべての授業を担任教諭とALTの二人で行っている。

(2009.4.27)

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